2026.01.03 夜 先斗町に残る、変わらないすき焼きのかたち@すきやき いろは 北店 焼肉・肉料理 京都市 10000円〜29999円 ★★★☆☆ 鴨川と木屋町に挟まれた細い通り、先斗町。京都らしい風情が色濃く残るその地に、明治44年(1911年)創業の『すきやき いろは』の歴史が息づく。大正期に先斗町へ移転し、昭和39年(1964年)に開かれた「北店」は、元お茶屋を改装した畳敷きの個室空間。喧騒を離れて、ゆっくりとすき焼きと向き合える環境が整っている。 看板の「すき焼き」は、鉄鍋にざらめを敷いて火にかけるところから始まる。店ではこの砂糖を「ごあん」と呼び、一般的な上白糖より粒が大きく、溶ける時間もゆっくり。その分、香ばしさがじっくりと立ち上がる。 頃合いを見て霜降りの和牛ロースを投入。軽く焼き色がついたところで、秘伝の割下を回しかける。肉に火が通りすぎないように仕上げるのはスタッフの手際に任せて、客はただ出来上がりを待つだけ。卵にくぐらせて口にすれば、脂の甘みと赤身の旨味が一体になって、素直に「うまい」と思える仕上がりだった。 野菜類は後から鍋に投入。豆腐、白滝、長葱、榎茸など、定番の構成ながら、それぞれの具材が鍋の旨味を吸って役割を果たしていた。葱は焼き目がついたことで甘みが引き立ち、白滝は食感のアクセントに。 ご飯と卵もセットで用意されており、肉をご飯にのせて頬張れば、自然と笑みがこぼれる。 口を整える前菜には「蛸と胡瓜の酢味噌和え」。 デザートは粉糖を軽くまとった苺。酸味と冷たさが、食後の満足感をそのままに、気持ちを落ち着かせてくれる。 先斗町の賑わいの中にありながら、『いろは 北店』の空間は静かで落ち着いている。格子戸を抜けて個室に入れば、外の喧騒が嘘のよう。観光地にありながら、慌ただしさとは無縁で、すき焼きと向き合うための余白がしっかりとある。奇をてらわず、丁寧に整えられた料理と、老舗らしい安定感のあるもてなし。京都の奥行きを静かに感じさせてくれる、そんな一軒だった。ご馳走様です。 — すきやき いろは 北店075-221-0403京都府京都市中京区先斗町四条上ル鍋屋町215https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260201/26002605/