名古屋・清水エリアに店を構える韓国料理店『しみず』。2006年オープン。現在は完全予約制で、簡単に席が取れる状況ではない。料理に向き合う姿勢が、その予約難易度ときれいに重なっている。料理の方向性は明確で、味を強く決めにいかない。その代わり、下処理、火入れ、出汁の積み重ねで成立させるタイプの韓国料理。アク取りを徹底し、素材ごとの役割を整理し、雑味を残さない。結果として、輪郭ははっきりしているのに、食後に重さが残らない構成になっている。

最初が「カンジャンセウ」。海老の甘みが前に出て、醤油はあくまで支える側。塩気で引っ張らず、旨味の持続で食べさせる設計だ。

「チャプチェ」は春雨のもちっとした食感と、野菜の火入れが揃い、胡麻の香りが全体をまとめる。

そして「カンジャンケジャン」。この店を語る上で外せない一皿だ。蟹味噌と内子の濃度、醤油のコクの乗せ方が的確で、過剰な主張はないのに印象は深い。さらに忘れられないのが、身と味噌をご飯と混ぜた一杯。蟹の旨味、醤油のコク、ご飯の甘みが一体となり、料理というより必然のアウトプット。この店の韓国料理が、酒の肴で終わらず、きちんと食事として成立していることを象徴する一皿だ。

この日いちばん印象に残ったのが「茹で豚」。きちんと効かせた塩気がまず輪郭を作り、その上で豚の甘みと脂の質がはっきりと伝わってくる。火入れは過不足なく、繊維はほどけ、噛むほどに旨味が広がる。胡麻の香ばしさとねぎの青さが重なり、味は明確なのに後味は軽い。余計なことをしていないからこそ、仕事の精度がそのまま伝わる一皿で、自然と箸が進む。これは間違いなく再訪理由になる。

「牛すじ煮込み」は一転して、辛味がしっかりと前に出る。牛すじのコクと脂に、唐辛子の辛さを真正面から重ね、ぼやけさせない構成。辛さの中に旨味があり、酒を飲ませるための煮込みとして完成している。

日本酒に漬けた「鮟鱇鍋」は、羅臼昆布のだしを土台に、特製のコチュジャン的な調味が味の核を担う。

梨、青森にんにく、韓国唐辛子、酒、味醂、白出汁を使ったその調味は、甘み・辛味・旨味のバランスがよく、木の子や白菜の水分と自然に溶け合う。ぷるぷるとした鮟鱇のコラーゲン感が、このスープの中で自然に溶け込み、だしや調味と一体化していく。

そして「キンパ」。具は鮭。派手さはなく、味付けも穏やかで、完全にお母さんのおにぎりレベルの安心感。正直お腹は十分だったが、それでも無理なく食べ切れてしまう。食事の終盤に出てきても、ちゃんと居場所があるのだ。

一皿ごとの完成度も高いが、それ以上に印象に残るのは、最初から最後まで味の流れが途切れないこと。強さで押すのではなく、下処理と火入れ、出汁の精度で積み上げていく構成だから、しっかり食べたという実感が残る。それでも食後に変な疲れが出ないのは、味の整理が行き届いているからだろう。『しみず』は、韓国料理を勢いで消費させる店ではない。料理をきちんと食事として成立させる力がある。予約が難しい理由も、食べ終えたあとには自然と腑に落ちる。ご馳走様でした。
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しみず
052-937-4321
愛知県名古屋市北区清水2丁目4-6 清水ビル1F
https://tabelog.com/aichi/A2301/A230110/23037011/