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2025.12.08 夜

広東の文法で遊ぶ、いまの中華@鶫

中華料理

六本木・麻布・広尾

10000円〜29999円

★★★★☆

西麻布・星条旗通りの一角に構える創作中華『鶫』。2021年にオープンしたこの店は、冬に訪れる渡り鳥・鶫の名を借り、ゲストが羽を休める“宿木”のような存在でありたいという想いを込めている。ビルには鮨や焼鳥、お好み焼きなど複数の料理店が並び、ひとつの建物の中で多様な食文化が共存。その中で『鶫』は、広東料理を土台にしながら、現代的な創作性をそっと重ねていくスタイルを貫いている。

スペシャリテの「カラスミ翠ビーフン」が端的に物語る。ほうれん草を練り込んだ翡翠色のビーフンに、カラスミを粉雪のようにまとわせるという発想は、季節性と色彩の遊びを加えた一皿。定番のビーフンをここまで別物に仕立てる創作性が、店の個性を最も鮮やかに表している。

「ローストピーフ台湾ソース」は、ローストビーフに台湾の調味を重ね、さらにチーズで輪郭を変えるという組み立て。異なる文化を混ぜるのではなく、うまく“接ぎ木”するようなアプローチに店のセンスが光る。

「上海蟹の紹興酒漬け」では、伝統料理に季節の輪郭を強めるタッチを加え、素材そのものの力を前へ押し出していく。

「広東白菜と黄韮の塩炒め」は、一見シンプルだが、火入れの仕上げや味の置き方に料理人の美意識が宿る。

「北京ダック 黒胡椒醬ソース」は、定番の甜麺醤ではなく黒胡椒醬を主役に据えたアレンジで、香りではなく“ニュアンス”を変える創作。パリッとした皮と肉の旨味が、黒胡椒のキレによって新しいバランスで立ち上がる。

「佛跳牆」は、乾物の旨味を重ねた伝統料理をやや軽やかに仕立て、現代的な食卓に寄り添う構成。

「大海老のオーロラソース炒め」は、海老の火入れに中華の技が光りつつ、ソースの甘酸で親しみやすさを残す仕掛け。

「豚スペアリブ赤ワイン煮込み」は、赤ワインのニュアンスを中華に溶け込ませる創作性が面白く、旨味の出し方にも柔らかい表情がある。

〆の「ほうれん草の翡翠炒飯」は、翡翠色の美しさだけでなく、油の使い方や味の方向づけに創作の余白を感じさせる仕上がり。素直に食べ進めてしまう気持ちよさがある。

「杏仁豆腐マンゴーソース」は、杏仁の穏やかな香りにマンゴーの軽やかな甘酸を添えた構成で、最後の一口まで優しい。

総括すると、『鶫』は広東料理を軸に“創作性”を自然に織り込む中華。素材の持ち味や料理の文脈を尊重しながら、現代的なアレンジを一皿ごとに加えていく姿勢が印象的だ。星条旗通りのビル内に集う多様な料理店の中でも、中華の可能性をしなやかに広げる存在として記憶に残る。ご馳走様でした。


050-5570-6077
東京都港区西麻布1-4-48 大樹ビル 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13262512/

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