「おいしい」を、
すべての人に。

検索

2025.11.25 夜

技と素材が静かに結実する、和食の上質な夜@麻布室井

日本料理

銀座・新橋・有楽町

50000円〜

★★★★☆

銀座の夜景を背に薪の炎がゆらぐカウンターに腰を下ろすと、大将の名前を掲げた『麻布室井』の世界が始まる。2022年に麻布十番で産声を上げ、再開発を機に23年末に銀座でリスタートした一軒。大将・室井大輔氏は「神楽坂 石かわ」で9年、「紀茂登」での修業を含め12年のキャリアを積み上げた、和食ど真ん中のサラブレッドだ。 そのキャリアにして肩肘張らない人懐っこさも彼の魅力。その空気のままに、冬は間人蟹の魅力を芯に据えたコースが一皿ずつ姿を現す。

蟹も含めて魚介類は全て遠藤商店のもの。名店がこぞって扱うことで知られる仲買だけあって、そのクオリティーはその時点で約束されたようなもの。実際、供された間人蟹は姿を見ただけで質がわかる堂々たる風格で、身の張りと香りの清さは、料理に入る前から期待を一段引き上げてくれる。

一皿目は「間人蟹の香箱」。甲羅にぎゅっと詰まった身と内子・外子の存在感がまず目を引く。箸を入れると密度の高さがそのまま伝わり、内子の濃厚さ、外子のぷちりとした食感、ほぐし身の清らかな甘味が素直につながっていく。素材の力をそのまま差し出すような、冬の幕開けにふさわしい一品だ。

続くのは「栗蒸しの素揚げ」。蒸した栗にひと手間を加えて素揚げにし、外側はカリっと、中はほくりとした対比が心地よい。

そして、間人の蟹真薯と蕪のお椀。澄んだ出汁にふわりと浮かぶ真薯は蟹の香りが堂々と立ち、柔らかく火の入った蕪の甘味がその輪郭を優しく広げる。柚子の香りが後ろからふっと抜け、冬の空気を思わせる一椀。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_04931.jpg

造りは明石の鯛と水烏賊と下足。鯛は噛むほどに旨味が立ち上がり、厚めに引いた水烏賊はねっとりと舌に絡む。下足は歯ごたえがアクセントとなり、それぞれの質感がきちんと役割を持って並んでいる。

続いて茹で蟹。まずは脚の一本がそのまま供され、端正に火の入った身の白さが目に入る。殻からすっと抜けるほど身離れがよく、口に運べばほろりとほどけ、控えめなのに確かな甘味が舌に広がる。

焼き蟹は炭の熱で表面にほんのりと香ばしさが生まれ、噛むたびに香りがふわりと立つ。焼きの香りが甘味に軽く寄り添い、茹でとは違う表情を楽しませてくれる。

そこから「茸の霙和え」でひと息つく。すっと舌を整えてくれる軽さがあり、濃い味の前にちょうどいい間になる。

続く「蟹味噌の甲羅焼き」は蟹味噌だけを炙った潔い構成で、香りがふわりと立ち上がり、素材だけの味わいに終始する。

さらに「海老芋の湯葉餡かけ」へと移り、湯葉のやわらかなとろみに海老肝の旨味がそっと潜み、淡さの中にほどよい厚みを残していく。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: IMG_05011.jpg

食事に入っても蟹の勢いはまったく衰えない。ここでまさかの上海蟹まで連れてくるあたり、コースの遊び心が見える。土鍋の中には上海蟹の濃厚な風味と、間人蟹の軽やかな甘味が一緒になだれ込み、米がそのまま旨味の器として受け止めている。

そこに重ねるのは、群馬の雌牛による薪焼きのシャトーブリアン。薪の熱でじっくり火が入り、外側にはほのかな香り、内側には赤身のしっとりとした旨味がそのまま生きている。多少の過剰さはありつつも、ここまで来ればむしろご褒美のように受け取れる。

甘味は「ジェラート」から。香りの立ち方がやわらかく、重ねてきた料理の余韻をほどよく整えてくれる。

続いて「柿のラム酒ゼリー」。とろりとした大白柿にラム酒の香りをほんのり重ねた仕立てで、甘味の丸さとアルコールの軽い揺らぎが心地よく広がる。静かに締めていく二品だ。

ついついデザートワインにも手が伸びてしまった。

総括すると、『麻布室井』は大将の人柄そのままのやわらかな心地よさが流れる店だ。和食の王道で培った経験がある一方、構えさせない空気感があり、その両方が皿の佇まいにも自然に滲む。素材は遠藤商店の確かな目利きに支えられ、印象に残る素直な美味しさにまとまっている。銀座で大切な人をもてなしたい場面でも、自信を持って選べる店だ。ご馳走様でした。

麻布室井
東京都中央区銀座5-5-12 HULIC&New GINZA MIYUKI 5 10F
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13292026/

エリア

ジャンル

価格帯

評価

月別アーカイブ