街の空気がゆっくりと和らぐ時間帯、川崎市・武蔵新城駅のすぐそばで炭の匂いだけが静かに温度を上げている。2023年創業ながら、気づけば食好きの間で存在感を増し続ける『炭火焼肉ホルモンさわいし』。店主・沢石氏は毎朝、東京食肉市場へ向かい、その日の肉の状態を自分の目で確かめて仕入れる。牛内臓の柱となるのは、市場内でも屈指の存在感を持つ「樺澤商店」。豚内臓は白金高輪の名店「鈴木屋」から届き、正肉は高品質で知られる「ヤザワミート」が支える。扱う側に揺るぎない信念がなければ成立しない布陣だ。

沢石さんの仕事の根底にあるのは、徹底した鮮度へのポリシーだ。ホルモンはその日のものを、その日のうちにを貫き、タンやハラミでさえ一晩置けば香りが抜け、食感がわずかに落ち着いてしまうと語る。ホルモンも同じで、僅かな時間差が味の輪郭を変えていくからこそ、平日はその日仕入れた分だけを使い切る。このポリシーこそが、食通を魅了してやまない肉の力強さを支えているようだ。

焼き台に移れば、赤身の魅力が一気に花開く。「サガリ」は厚みのあるカットが魅力で、噛むほどに赤身の旨味がじんわりと滲み出す。力強いのに重すぎない、実に絶妙なバランス。「カタサンカク」はサシの入り方が美しく、炙った瞬間に立ちのぼる香りが食欲を一気に加速させる。

「ランプ」は素直な赤身の旨味がストレートに届き、「イチボ」は脂の甘みがふわりと広がる華やかな余韻。厚みの調整も見事で、それぞれの個性が最も引き立つ形で提供されている。

そして、この店が本領を発揮するホルモン。「ツラミ」は塩のキレが鮮やかで、噛むほどに奥の旨味がじわじわと広がる。「シマチョウ」は脂の溶け方がゆっくりで、甘みと香ばしさが舌の上で共鳴する。

「ギアラ」は赤身の力強さを感じる味わいで、「上ミノ」はザクザクとした歯切れの快感が心地良い。どのホルモンも鮮度が旨味の芯を作っていると実感させてくれる。

締めには三つの方向性が揃う。「旨辛ユッケジャンラーメン」は辛味の奥で出汁と肉の旨味が重なり、力強いのに雑味のない後口が心地よい。

「黒タンカレー」はスパイスの香りに黒タンの旨味が太い芯を作り、焼肉の延長線上にあるもうひとつの肉料理として成立している。そして「冷麺」。啜った瞬間に立ち上がる出汁の旨味が印象的で、焼肉の余熱をすっと引き取っていく。三皿それぞれが違う角度から、今日の肉を締めくくってくれる。

総括すれば、『炭火焼肉ホルモンさわいし』は鮮度という一本の軸で店全体を貫く稀有な焼肉店だ。赤身、サシ、ホルモン、それぞれが違う声を持ちながら、どれも同じ方向を向いているのは、沢石氏の仕入れの判断と扱いの基準が揺るがないからだろう。食後の余韻がふと蘇り、またあの赤身を、あのホルモンの歯ごたえをと思わせる。いまでは予約が困難を極める状況になっているが、真剣に肉と向き合いたい日に、自然と候補に挙がる一軒だ。ご馳走様でした。
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炭火焼肉ホルモンさわいし
神奈川県川崎市中原区新城1-10-14
https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140504/14091558/