2025.11.15 夜 手作り餃子の香りと食感@餃子館 餃子 京王・小田急沿線 1000円〜2999円 ★★★★☆ 甲州街道の夜に赤と黄色のネオンがぼんやり灯る。その看板には大きく、本場と手作りの文字。世田谷・八幡山の『餃子館』だ。1989年に本場の吉林省出身のご夫婦が創業し、現在は二代目が継ぐ老舗。看板のキーワードの通り、店内に入れば、カウンターの後ろでは常にスタッフが数人がかりで餃子を包んでおり、手粉が舞い、皮をのばす音がリズムになって響く。作り置きという概念が存在しない、まさに言葉通りの手作りの現場だ。 水餃子こそ、ここが“手作りの店”であることを最も端的に示す存在。ひだを作らず薄めの皮をすっきりまとめ、茹で上がればつるんと光る。噛んだ瞬間にはまずむっちりとした皮の存在感。そこから肉汁や具材の個性がゆっくり広がり、咀嚼の先で穀物の甘味がふわりと立ち上がる。この皮の個性こそが、毎日カウンターの後ろで包まれる手作りならではの魅力。 「しそ水餃子」は軽やかな代表格。熱々の肉汁の余韻を追いかけるようにしその香りがすっと抜け、瑞々しさとコクが同じ温度で共存する。清涼感のある後味がすぐに次の餃子へと誘う。「春菊水餃子」は香りの立ち方が一段深い。春菊のほろ苦さと青い香りがしっかり輪郭を持って主張し、豚の旨みと重なると味がきゅっと締まる。後口の軽快さは格別で、香りで餃子の表情が変わるという面白さを一番ストレートに伝えてくれる。これらの風味を楽しむために、少なくとも最初はタレなしで食すのがおすすめ。 焼き餃子の「野菜餃子」は、焼き目は香ばしく、厚めの皮のむっちりした弾力が最初に主張。咀嚼が進むと野菜の甘みと肉のコクがじわじわ広がり、最後はすっと軽く引く。 サイドの「おつまみチャーシュー」も抜群。脂はとろり、赤身はほぐれ、甘めのタレが肉に染み、山盛りのネギが辛味のアクセント。餃子の合間にひと口挟むと、また餃子に戻りたくなる。シンプルなスープと白米も安定感があり、食堂としての信頼感を下支えする。 看板に掲げた本場や手作りという言葉に、店が真正面から向き合っているのがよくわかる。カウンターの後ろで延々と続く手作業のリズムが、そのまま餃子の味の芯の強さにつながっている。特に水餃子の滑らかさ、香りの立ち方、肉汁の広がりは、この店でしか体験できないもの。行列が示す通り、ここにしかない餃子がある。ご馳走様でした。 — 餃子館090-2446-0229東京都世田谷区上北沢4-29-19https://tabelog.com/tokyo/A1318/A131809/13108385/