2025.11.02 昼 100年の時が育てた、品格の洋食。@資生堂パーラー 銀座本店 洋食 銀座・新橋・有楽町 5000円〜9999円 ★★★★☆ 銀座の中心、文明開化の記憶を今も宿す老舗『資生堂パーラー 銀座本店』。1902年創業、前身は日本初のソーダファウンテン。ここはまさに“洋食文化の礎を築いた老舗”。化粧品会社の一部門として生まれながら、「美は食とともにある」という理念のもと、食の世界に美意識を持ち込んだ。その空間は、白いクロスに金彩の皿、照明の反射まで計算された静謐な舞台。客は観客であり、料理は作品だ。 幕開けを飾るのは「伝統のコンソメスープ」。琥珀色のスープから立ち上る香りは、まるで肉の旨味を凝縮したエッセンス。口に含むと、骨や筋から滲み出た深い旨味がじわりと広がり、後半にはコクがどっしりと舌を包み込む。ひと口で胃が目を覚ますような濃度感。 「クラブクロケット」は、蟹の繊維がしっかりと残る上質な仕上がり。衣は軽く油も控えめ、トマトソースの酸が蟹の甘みを引き締める。老舗の味ながら古びず、むしろ時代を超えて洗練を感じる。 「海の幸のトマトマカロニグラタン」では、ごろっとした海老や貝が贅沢に顔を出す。ベシャメルのまろやかさとトマトの酸味が層をなし、表面の焼きチーズが香ばしく全体をまとめる。熱々の湯気の向こうに、洋食の原風景が見えるようだ。 看板「オムライス」は、ふっくらとした厚みのある卵でライスを包み込む。中のチキンライスはバターの香りと粒立ちが際立ち、上にかかるのは酸味の効いたトマトソース。ケチャップではない、きちんと仕立てられたクラシックソースの気品。懐かしさと端正さが同居する、洋食の理想形だ。 「飛騨牛のビーフカレーライス」は、黒に近い深いブラウン。香りはビターで、ルウの奥に焙煎の苦味とスパイスの香りが潜む。ひと口目の衝撃よりも、食後にじわりと残る旨味の余韻が印象的。まさに“大人のカレー”という表現がふさわしい。 全体を通して一貫しているのは「端正」という言葉。皿の構成、火入れ、ソースの濃度、すべてが整っている。一皿ごとに感じる安定感が心地よい。体が覚えている味という感じ。洋食が日本でどう磨かれてきたか――その答えがここにある。100年以上の時間が積み上げた技と美意識が、静かに今も輝きを放つ。美しい洋食とは何かを知るために、この場所を訪れる価値はある。 ご馳走様でした。 — 資生堂パーラー 銀座本店03-5537-6241東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル 4F・5Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13004938/