2025.10.31 昼 人が並ぶのは、夢を見るため@リリエンベルグ デザート 川崎市 1000円〜2999円 ★★★★☆ 新百合ヶ丘の丘の上、木々の間から姿を現す小さな洋館——『リリエンベルグ』。 1988年創業、店名はドイツ語で“百合の丘”。その名をこの地の名に重ねた時点で、この場所と共に生きるという決意が伝わる。朝にはすでに長い列。けれどその列は不思議と穏やかで、誰もが期待に満ちた顔をしている。まるで小さなテーマパークの入場を待つように、誰もが少し浮き立っている。 今回選んだのは、この店の世界観をもっともよく表す3つ。 「ザッハトルテ」 幾重にも重ねたチョコレートの層がきっちりと仕立てられ、アプリコットジャムが生地とコーティングの間にほのかに香る。生クリームを添えてバランスを取る構成は、ウィーン菓子の文法に忠実。重厚でいてくどさがなく、最後まで美しくまとまる。伝統の再現というより、リリエンベルグ流の定番。 「リリエンベルグ」 洋酒が香る、ちょっとリッチなチョコレートケーキ。オレンジリキュールがほのかに立ち、チョコの苦味と柑橘の華やかさが溶け合う。食感はしっとりとしていながら軽く、香りが鼻に抜ける瞬間に幸福感が訪れる。華やかだけど派手ではない、まさにこの店の気品を象徴する一皿。 「モンブラン」 細やかに絞られた栗のペーストは、香りも甘さも穏やか。軽やかなクリームがそれを受け止め、舌の上でやわらかくほどける。土台のメレンゲが軽快な歯触りを添え、味わいに奥行きを作る。秋の定番ながら、毎年この季節を楽しみに訪れる人が絶えないというのも納得。 『リリエンベルグ』は、この丘に根づいたひとつの風景。名に込めた想いの通り、土地と共に息づき、人の記憶に残る。行列の先にあるのは、非日常ではなく、丁寧に積み上げられた日常の幸福。その静けさの中で、誰もが少しだけ夢を見る——そんな時間が、ここには流れている。ご馳走様でした。 — リリエンベルグ044-966-7511神奈川県川崎市麻生区上麻生4-18-17https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140508/14000034/