「おいしい」を、
すべての人に。

検索

2025.10.27 夜

六本木の終わりに、体が求めた味。@クッチーナ アッラ バーバ

イタリアン・ピザ

六本木・麻布・広尾

5000円〜9999円

★★★★★

六本木の夜が静けさを取り戻すころ、ふと灯りが残るビルの一角。そこが『クッチーナ アッラ バーバ(Cucina alla Baba)』。夜を締めくくるにふさわしい、特別な温度を持つ店だ。かつては朝5時まで火を入れ続けていたが、営業時間は短くなったものの、その熱は少しも冷めていない。今も変わらず、深夜の空腹と静寂を満たす場所として六本木の夜を見守り続けている。

主役は「カチョ・エ・ペペ」。ペコリーノの雪が皿に降り積もり、胡椒の香りが立ち上る。パスタは艶やかで、噛むたびに弾力と小麦の香りが広がる。口に入れた瞬間、塩味と脂が重なり、オイルの艶が余韻を引く。柑橘の香りが微かに抜け、重さの中に軽やかさを与える。シンプルにして完璧。理屈抜きで、体が求める味。そして何より、この胡椒の効かせ方が実に巧い。ピリッとした刺激がワインの香りを引き立て、パスタでありながら、つまみとしても成立してしまう。食中でも、締めでも、どんなタイミングでも美味い。

そして今夜、もうひとつ「トリッパのスパゲッティ」。煮込みの定番をパスタとして再構築した一皿。蜂の巣の食感とトマトの酸味、パルミジャーノの香りが幾重にも重なり、噛むほどに旨味が増す。煮込みの力強さを持ちながら、後味は驚くほど軽い。重さではなく、旨味の余韻だけを残すのが馬場流。

前菜もまた印象的。「生ハム」はアメリカ産とスペイン産の2種。熟成の方向性がまるで違い、食べ比べが楽しい。

「モルタデッラ」はピスタチオの香ばしさがアクセントとなり、柔らかくワインを誘う。

「オリーブとドライトマトのマリネ」は、陽をたっぷり浴びた果実の旨味が詰まった一品。「熟成ポテトとアンチョビ」は、冷製のじゃがいもにアンチョビの塩味が深く染み込み、シンプルながら中毒性のある味わい。

「ゆで卵と自家製マヨ」は、卵の甘みとマヨの酸味が均衡し、強いインパクトを残す。

この店には、静かな高揚感がある。派手な盛り付けも、気取ったサーヴィスもない。あるのはただ、火と塩と小麦への真摯な姿勢。深夜の六本木で、心を落ち着けて食に向き合える数少ない場所だ。『クッチーナ アッラ バーバ』。営業時間は短くなっても、夜を締めくくる場所としての存在感は揺るがない。カチョ・エ・ペペの香りとともに一日が静かに終わる。六本木を締めるなら、やはりここしかない。

クッチーナ アッラ バーバ
03-6804-1993
東京都港区六本木5-9-14 第7ビル 3F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13170144/

エリア

ジャンル

価格帯

評価

月別アーカイブ