2025.10.26 夜 主役は、彼女。目黒の夜を彩るスパイスと餃子。@SHE meguro 餃子 東急沿線 10000円〜29999円 ★★★★☆ 目黒の住宅街の一角、夜風が落ち着くころ、灯りに導かれるように見つけた『SHE meguro』。 主役は、彼女。——この一言が、この店のすべてを語る。女性が主役でいられる空間をつくりたい、そんな想いが“彼女”という名に込められている。カウンター越しの柔らかな灯り、落ち着いた木の色合い、静かな音楽。華やかさではなく、凛とした余白の美しさが支配する場所だ。 料理の軸は餃子。けれど、ここでは“餃子”という言葉に縛られない。形は同じでも、味わいの解釈がひとつひとつ異なる。「冷製の水餃子」は帆立と茄子、ズッキーニの涼やかな餡を和出汁のジュレで包み、温度と香りの対話で魅せる一皿。「焼き餃子」は、青唐辛子や木の子、タプナードなどで季節や辛味を表現し、軽やかで香り高い。ベースには丁寧な下仕事があり、スパイスを重ねても雑味がない。どの餃子も主張は強すぎず、余韻の美しさで印象を残す。 サイドの料理たちは、アジアを旅するような構成。「真鯛のエスニックサラダ仕立て」はライムと香草で清涼に、 「ベトナム風ちまきソテー」は生春巻きの軽さと米の香ばしさを同居させ、 「トムヤムスープのよだれ鶏」は、まるでセビーチェのような一皿。ハーブと柑橘の酸が爽やかに立ち上がり、辛味が遅れて追いかけてくる。軽やかで、白ワインを誘う味わいだ。 「レッチリ唐揚げ」は唐辛子と花椒の香りが重なり、思わず手が止まらない中毒性。 「インドネシア風ビーフレンダンのパスタ」は濃厚でいて後味がスッと消える秀作。エスニックの自由さと女性的な軽やかさ、その両立がこの店の個性だ。 そして、この店にはもうひとりの“彼女”がいる。器を手がけるのは、シェフの奥様。すべて彼女の手で生み出された器たちは、どれも少しずつ違う表情を持ち、料理に寄り添うように佇む。料理が香りで語るなら、器は余韻で語る。ふたりの感性が重なって、『SHE meguro』という物語が完成している。 香り、温度、質感。そのすべてが繊細で、強く、しなやか。主役は彼女、脇役はスパイス。もうひとりの彼女が、その世界を器で支える。目黒の夜に灯るこの一軒は、“女性のためのエスニック”という新しい物語を静かに奏でている。ご馳走様でした。 — SHE meguro050-5589-0247東京都品川区上大崎4-5-31https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131710/13248858/