2025.10.03 夜 一皿ずつが完結する、奇跡のようなアラカルト@宮わき 日本料理 浜松町・田町・品川 10000円〜29999円 ★★★★☆ 赤羽橋の路地裏、『宮わき』。2012年に荒木町で創業し、2022年にこの地へ移った。確かな経歴に裏打ちされた技術と構成力。その一皿一皿に、経験の厚みがにじむ。料理は奇をてらわず、素材を正面から捉え、組み立ての妙で魅せる。これだけのクオリティをアラカルトでも楽しめるというのが、この店の最大の強み。最初はコースで、その精度と流れを体感すべし。 まずは「磯つぶ貝」「もずく」「枝豆」。控えめな盛り付けの中に季節の息づかい。磯つぶ貝は噛むほどに海の甘みが広がり、もずくは出汁の香りをまとって柔らかく締まる。枝豆の塩気が味覚の輪郭を整える。 「土瓶蒸し」は鱧と松茸。立ち上る香りだけで秋の空気に包まれる。鱧の旨味を透き通る出汁が支え、松茸の香りがふわりと重なる。スダチをひと搾りすれば味が締まり、清らかさが際立つ。 続く「牡蠣の飯蒸し」は、蒸気とともに立ち上がる香りが濃厚で、牡蠣の旨味が米の隅々にまで染み込む。噛むたびに海のミネラルが口いっぱいに広がり、ふっくらとした食感が心地いい。余計な味付けをせず、素材の力だけで勝負している。 刺身は「クエ」と「本マグロ」。マグロはしっとりと脂がのり、舌の上で旨味が滞留する。クエは透明感のある身質で、噛むほどに甘みが滲む。 焼物の「太刀魚」は、皮目を香ばしく焼き上げ、中はしっとり。添えられた「鯛味噌」が圧倒的にうまい。味噌の香ばしさと甘みが太刀魚の淡白さを引き立て、ご飯が頭をよぎる。 「秋刀魚と舞茸の春巻き」は、大将の構成力が光る一皿。サクッとした衣の中で秋刀魚の脂と舞茸の香りが溶け合い、軽やかなのに深い。和の素材を別の技法でまとめ、きっちり自分の皿に仕立てている。 「栗の渋皮煮」は、甘味ではなく、秋の締め。渋みと香りでコースを着地させる構成で、余韻がきれいに残る。 「蕪、毛蟹、菊あん」は、穏やかな一皿ながら完成度が高い。蕪の柔らかさ、蟹の旨味、菊の香り。それぞれが小さく主張しながら、きれいに調和する。 「琵琶湖の公魚」の酢の物は、酸味と苦みのバランスが絶妙。軽い揚げ浸しのような仕立てで、酸が穏やかに抜ける。季節の移ろいを一皿で描く、静かな仕事。 「食事」は混ぜご飯にイクラ、牛しぐれ、じゃこ、漬物。すべてが主張しすぎず、全体の流れを受け止める位置づけ。出汁を含んだ米の粒立ちが美しく、最後の一口まで緊張感を保つ。 どの皿にも技術と構成の確かさがある。火入れ、塩味の置き方、香りの合わせ方、すべてが狙い通りに決まっているのに、決して作り込んだ印象を与えない。自然体のまま完成しているのがすごい。そして何より、この完成度をアラカルトで楽しめるという事実に驚く。どの皿をどう組み合わせても、きちんと食事として成立してしまう。そんな店、そうそうない。ご馳走様でした。 — 宮わき03-5379-6545東京都港区三田1-3-28https://tabelog.com/tokyo/A1314/A131401/13276093/