2025.08.16 昼 凄い魚屋が、もっと凄い酒場に@根津松本 居酒屋・定食 上野・浅草・日暮里 10000円〜29999円 ★★★★☆ 東京・根津に店を構える『根津松本』。普段は一線級の魚だけを扱う魚屋として知られ、麻布台の高級商業施設にも出店するほどの存在感を放つ。 看板商品の「海苔弁」は、弁当という枠を超えた一級品として話題を集め、魚屋の在り方を新しい形で示してきた。まさに、目利きの力で「日本一の魚」を日常に届ける店だ。そんな『根津松本』が、ごく稀に開催するのが立ち飲み営業。普段は持ち帰り専門の魚屋が、この日ばかりはカウンターを酒場に変え、選び抜かれた魚をその場で味わえる特別な時間が流れる。 幕開けは「鮪のはがし」。やま幸の鮪で始まる贅沢さに、いきなり気分が高揚する。骨際の旨味が舌でほどけ、赤身の鉄分と脂の甘みが静かに重なる。 「秋刀魚刺身」は北海道より。澄んだ脂と透明感ある旨味が広がり、旬の魚の魅力をシンプルに伝えてくれる。 揚げ物は三品揃い踏み。「車海老フライ」は愛知の天然で、ブリッとした食感と甘みが力強い。「鱚フライ」は身の繊細さが際立ち、軽やかに衣をまとっている。そして「帆立フライ」が最も印象的だった。三品に共通するのは、衣の細かさ。油で包み込むためではなく、素材の力を前に押し出すための衣。その姿勢が帆立のミルキーな甘さを一層強調していた。 貝の部では「つぶ貝刺身」の力強い歯応えと、噛むほど広がる甘み。 「蒸し鮑」はふっくら火を入れ、磯の香りが余韻に漂う。 「鯵南蛮漬」は酸味と香味野菜が揚げ身を軽やかに包み込むが、それでも鯵そのものの旨味がきちんと立っている。南蛮漬けのような調理法でも、素材感が損なわれないのは魚屋の矜持ゆえだろう。 「あん肝煮」はクリーミーなコクに醤油の輪郭、酒泥棒の典型。 その中でも一番の刺客は「紅鮭XO醬」。作り置きとは思えぬ完成度で、旨味がギュッと圧縮されている。鮭の脂、干し貝柱様のコク、唐辛子のキレが三位一体。ひとかけで日本酒が一合消える。アテとして完璧、瓶詰めがあれば即買いしたいレベルだ。 締めは「うに丼」。お盆明けで寿司屋の休みが多く、一等品の雲丹がこちらへ集まったという。ネットワークの勝利。山盛りの雲丹は雑味がなく、とろりと甘い。普段なら値の張るクオリティを、丼で豪快に。気づけばスプーンが止まらない。 酒は黒龍中心のラインナップ。酒蔵との強いネットワークがあるのだろう。だからこそ、味わいが一段深く感じられる。 根津松本の立ち飲みは、魚屋の日常が一夜にして“体験”へと跳ね上がる場所。素材の良さは当然、その良さが最大値で届くよう整える手つきと、言葉の説得力まで備えている。次の立ち飲み告知を虎視眈々と待ちたいと思う。ご馳走様でした。 — 根津松本03-5913-7353東京都文京区根津1-26-5-105https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131106/13174580/