2025.08.04 夜 深夜の京都で、割烹レベルの蕎麦前を。@おそば宝来 そば 京都市 10000円〜29999円 ★★★★☆ 京都・祇園の路地裏。観光客の姿もまばらになった深夜に、ひっそりと営業を続ける『おそば宝来』。名前の通り、蕎麦を中心とした店ではあるが、その中身は“蕎麦屋”というイメージを軽く超えてくる。特に注目すべきは蕎麦前の充実度。ちょっとしたつまみ、なんてレベルではない。夜中にこのクオリティを味わえること自体が貴重だ。 「鰯炙り」は、脂の乗りがしっかりした鰯を香ばしく炙り、白髪ねぎのシャキシャキ感と合わせて口当たりが軽い。魚の鮮度と焼きの技術がきちんとしているからこそのバランスだ。 「鴨ロース」は火入れが絶妙。表面はきちんと焼かれつつも、中はしっとり。噛むほどに鴨の旨味が出てくる。粒マスタードが脂に少しの鋭さを加えるのも好印象。 「唐墨餅」は、もちの香ばしさと唐墨のコクが相性抜群。海苔で巻いて仕上げることで香りの一体感が出ており、間違いなく酒が進む系の一品。 「小鮎天ぷら」は骨まで食べられる揚げ加減。レモンや塩でシンプルに食べることで、素材の味が引き立つ。 「松茸フライ」は季節感のあるひと皿で、フライという調理法が意外にも松茸の香りを閉じ込めていたのが印象的。 「肉コロッケ」は、家庭的な見た目ながら中の牛肉とじゃがいもの味わいにちゃんとした厚みがある。油切れもよく、揚げ物としての完成度も高い。 「穴子寿司」は巻きの仕上がりが丁寧で、穴子の柔らかさとタレの甘辛さ、酢飯のバランスが整っている。こちらもきっちりまとめた仕事。 そばメニューは、定番だけでなく変化球が多いのも特徴的。「グリーンカレーそば」は、ココナッツミルクの甘さと出汁が意外と合う。香りが立っているが、辛味は控えめで食べやすい。 「冷やし坦々そば」は、胡麻だれベースにトマトや薬味を加えて、酸味と香味のアクセントを加えた一杯。 「牛すじ九条ねぎそば」は、あっさりした出汁にとろとろの牛すじとたっぷりのねぎ。深夜の締めにぴったり。 全体を通して、料理には京都らしい感覚が随所に見える。味付けの繊細さ、薬味の使い方、そして季節感。蕎麦前のラインナップは、割烹や居酒屋と比べても遜色なく、むしろそれ以上の手間が感じられる。『おそば宝来』は、深夜営業という条件を抜きにしても、料理のレベルがしっかりしている。だが、やはりこの時間帯にこの内容が味わえることが最大の魅力。飲みの締めにもいいし、ここを一軒目にしてじっくり楽しむのもアリ。祇園の夜の選択肢として、間違いなく覚えておきたい店。ご馳走様でした。 — おそば宝来075-600-9418京都府京都市東山区祇園町北側338-4https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260301/26040683/