2025.08.03 夜 深夜に咲く、食材たちの第二章@深夜食堂 しまながし 居酒屋・定食 大阪市 5000円〜9999円 ★★★★☆ 大阪・北新地、深夜の時間帯に灯る一軒の光。それが『深夜食堂 しまながし』。高級料理店が軒を連ねる街の終着点にして、食材とアイデアの“終着点”でもある。いや、“再出発点”と呼ぶべきかもしれない。しかも日曜日も営業しているというのがありがたい。北新地の華やかな宴が一段落したあと、もう一杯、もう一皿を求める者たちにとって、これほど心強い拠点は他にないだろう。 屋号の「深夜食堂 しまながし」には、二つの意味が込められている。ひとつは、読んで字のごとく「深夜でも食事ができる」という実用的な魅力。もうひとつは、ネガティブな語感をポジティブに転化したセンス。ここで“流されて”くるのは、いわゆるフードロスになりかねなかった名店クオリティの食材たち。料理人の知恵と手仕事により、新たな命を吹き込まれ、この店で再デビューを果たす。そこには「第二の人生がある」とでも言いたげな、優しい哲学すら感じさせる。 さて、今回は「島流し食材」たちの祝祭を余すことなく堪能させていただいた。 「くじら赤身造り」は、深紅の艶めきにまず目を奪われる。その色は野性味を語りながらも、口に含めばねっとりと上品な旨味が広がる。生姜と葱のアクセントが絶妙で、清涼感と懐かしさが共存する一皿。 「海老紹興酒漬け」は、中国酒の香りが漂う官能的な一品。酒肴としての完成度が非常に高く、頭から尻尾までしゃぶり尽くしたくなる魅力を放つ。 続いて「和牛ヒウチローストビーフ」。赤身の濃厚な旨味と脂の甘みが共演するヒウチは、ローストという調理法でその個性を余すことなく表現。バルサミコの酸味が全体をビシッと引き締め、深夜の胃袋に「まだまだいけるぞ」と囁きかける。 「自家製しゅうまい」は、蒸しの技が冴え渡る一皿。餡のジューシーさと皮のしっとり感が絶妙なバランスで、青ねぎの香りが軽やかな余韻をもたらす。 「クリームチーズ味噌漬け」は、発酵の旨味を濃縮した中毒性のある逸品。 「きゅうりの漬物」は、地味ながら心に残る。胡麻の風味と浅漬けの塩気が絶妙で、次の皿への橋渡し役として秀逸。 「からすみ蕎麦」は、黄金色のからすみが山のように盛られ、蕎麦と絡むその姿は、まるで“深夜の贅沢”そのもの。一口ごとに海の塩気と麺の喉越しが融合し、思わず笑みがこぼれる。 そして〆には「ホルモンカレー」。どこか家庭的で懐かしいルーに、ぷりぷりと脂を抱えたホルモンが溶け込む。 『深夜食堂 しまながし』。ここには、名店の影がある。しかし、それは決して過去ではない。今、この場所で再び命を宿し、再構築された料理たちが、深夜の客たちを温めている。これはもう、訪れるべき“価値のある終着点”だ。ご馳走様でした。 — 深夜食堂 しまながし090-6324-5657大阪府大阪市北区堂島1-5-35 堂島レジャービル 4Fhttps://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27121170/