サクッと、とろり。揚げそばがきの衝撃。@蕎麦彩膳 隆仙坊

福島県・郡山の住宅街にひっそり佇む『蕎麦彩膳 隆仙坊』。古民家を改装した趣ある空間に足を踏み入れると、木の香りと縁起物に囲まれた静けさが広がり、時の流れがふっと緩む。ゆっくりと時が流れるような落ち着きに、料理への期待が高まる。

まずは看板の「天かき揚げせいろ」。主役はもちろん、糸のように繊細な超細打ちそば。するりとした喉越しと、噛むほどに広がる蕎麦の香り。キリリと辛口のつゆがその軽やかさを引き締め、潔い余韻を残す。

寄り添うかき揚げは、海老と小柱を惜しみなく詰め込んだ贅沢仕様。噛めば甘みがじわりと広がる。ただ、衣はややしっとり寄り。軽さというより、旨みを閉じ込めた密度感と考えるべきか。枝豆のかき揚げが青い香りを添え、抹茶塩とレモンで口の中をリセットできるのはうれしいポイントだ。サイズ感は見事で、器の上で堂々たる存在感を放っている。

だが、この店で本当に驚くべきは「揚げそばがき」。これはもう、蕎麦の常識を打ち破る一皿だ。外はサックサク、中はとろりと柔らかく、噛むごとに蕎麦の香ばしさと甘みが溢れ出す。胡麻油で淡く揚げることで生まれる香りの奥行きが、味わいに深みを与えている。そして、海苔で巻いてわさび醤油をちょんとつける瞬間、旨さのベクトルは一気に跳ね上がり、脳に焼き付く。思わず笑ってしまうほど。

『隆仙坊』は、古民家の落ち着きの中で、伝統と革新を同時に体験できる稀有な蕎麦処。福島の地で、ここにしかない蕎麦の表現を、ぜひ体験してほしい。ご馳走様でした。

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蕎麦彩膳 隆仙坊
024-932-0194
福島県郡山市清水台2-6-5
https://tabelog.com/fukushima/A0702/A070201/7001027/