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2025.07.25 昼

パフェを超えた“食べる芸術@ラトリエ ア マ ファソン

デザート

東急沿線

10000円〜29999円

★★★★★

上野毛の住宅街に、ひっそりとアトリエのように存在する『ラトリエ ア マ ファソン』。2019年のオープン以来、ここは単なるデザートショップではなく、食のアートを体験するための場所になっている。店名の意味は「私流」。この言葉に込められた哲学を、グラスの中で表現し続けるのが、日本有数の“パフェ職人”、いや、アーティスト・森郁磨氏だ。

これほどのアウトプットは、いかなるキャリアが生み出すのか?シェフは、辻調で基礎を磨き、ホテルニューオータニ東京で6年間クラシックを徹底。さらに「カフェ中野屋」で15年以上、パフェという概念を解体し、再構築してきた。きっとそこで磨かれたのは技術だけじゃない。食べる芸術を創るための感性と構築力なのだろう。

この日出会ったのは「宮崎マンゴーの抑場のあるエヴァンタイユスタイルのグラスデザート」。もはやタイトルから芸術性の高さを予感させる。黄金色の果実を扇状に並べた姿は、まるで美術館に展示される1つのオブジェ。スプーンを入れれば、濃密な甘さの後にライムの酸がすっと走り、奥からスパイスが香り立つ。甘さを軸にしながら、香りと温度と食感のリズムで物語を描く。グラスの中に閉じ込められた構築美は、食べるたびに風景を変えていく。

もう一つ、「旬の桃とアメリカンチェリーのピュイダムール 2025」。キャラメリゼのほろ苦さ、桃の柔らかさ、チェリーの酸味。それぞれが独立しながらも、層を進むごとにひとつに溶け合う。最後の一口を惜しむほど、計算され尽くしたバランス感覚。甘さで満たすだけのデザートじゃない、構造で語る芸術作品だ。

ここは“パティシエの店”ではなく、森郁磨というアーティストのアトリエ。彼は素材をキャンバスに、スパイスや酸味を筆にして、食べる人の記憶に残る一枚を描いている。上野毛の小さな空間で、このレベルのデザート体験が待っているとは。パフェという言葉で括るのは簡単だ。でも、そんなカテゴリーを軽々と飛び越え、芸術の領域に足を踏み入れたこの一皿は、日本のスイーツ文化の中で異彩を放つ存在と言っていいだろう。

ご馳走様でした。

ラトリエ ア マ ファソン
東京都世田谷区上野毛1-26-14
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131715/13242556/

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