2025.07.16 昼 東海道・由比で、桜えび尽くし@あおぞら 居酒屋・定食 静岡市(静岡・清水) 1000円〜2999円 ★★★☆☆ 東海道の宿場町・由比。この町に来たら、桜えびを食わずに帰るなんて選択肢はない。駿河湾だけに生息し、日本で唯一水揚げを許されたこの海老のために、街は丸ごと存在していると言っても大げさじゃない。 駅前には「由比桜えび通り」、空には大きな海老のオブジェ、漁港には大漁旗がはためき、季節になれば町全体が桜色に染まる。この町の鼓動は、まさに桜えびの息吹だ。 そんな聖地で出会ったのが、食事処『あおぞら』の「桜えび定食」。名前の通り、桜えびを味わい尽くすためのセット。ラインナップは「かきあげ」「桜煮」「海老塩」、そして白飯と味噌汁。潔くて、迷いのない構成がいい。 主役の「桜えびかきあげ」を前に、思わずニヤけてしまう。皿に並ぶ桜色のかき揚げ、その姿だけで酒が飲めそうだ。箸で持ち上げると、衣はカラリと軽く、油切れの良さが指先に伝わってくる。ひと口、サクッと小気味よい音を立て、続けざまに押し寄せる甘みと香ばしさ。噛むたびに殻の歯ごたえが弾け、口中に広がる旨味の洪水。ここに「桜えび塩」をひとつまみ。甘みと香りが一段と際立ち、塩が素材の良さを引き上げる。この瞬間、桜えびが単なる海老ではなく、文化そのものだと実感する。 そして「桜煮」。干し桜えびを甘辛く煮含めた佃煮で、見た目は地味だが、ひと口でその存在感を証明する。噛みしめるごとに、凝縮された旨味とタレの甘辛が染み渡り、ゴマの香りがふっと抜ける。この一品に酒がないのが罪深い。 この定食を食べ終えた時、由比の桜えびはただの食材じゃないとわかる。これは春と秋の限られた海の恵みを、この町が誇りを持って育んだ文化。『あおぞら』は、その文化を余計な装飾なしで届けてくれる店だ。 桜えびを食べるなら、本場で。ここに来る理由、それだけで十分だ。ご馳走様でした。 — あおぞら054-375-2411静岡県静岡市清水区由比今宿195-1https://tabelog.com/shizuoka/A2201/A220102/22003918/