2025.07.13 昼 竹林を歩いてたどり着く、五感で味わう和菓子体験@とらや工房 喫茶店・カフェ 静岡 1000円〜2999円 ★★★☆☆ 静岡・御殿場の自然に包まれるようにして現れる和菓子処『とらや工房』。 まるで森に溶け込むかのようなその佇まいは、訪れる者を日常からそっと解き放ち、心を静かに整えてくれる。とらやといえば、言わずと知れた老舗和菓子の名門。その分工場である「工房」が冠されるこの場所では、「作る」ことと「出す」ことがひと続きの体験として味わえる。その工程が、ガラス越しに眺められるのも魅力。 まずは「どらやき(小倉)」。両手のひらにすっぽり収まるサイズ感ながら、その存在感は堂々たるもの。外皮はしっとりと水分を含み、手に取った瞬間から上品な甘い香りがふわりと立ち上る。中に包まれた小倉餡は、粒がほどよく立ち、滑らかさとホクホク感のバランスが見事。ひと口目から思わず頬がゆるむ。しっとりとした皮と、優しく甘い餡が口の中で溶け合い、気づけば二口、三口と手が進む。 続いて土日祝限定の「赤飯大福」。見た目はぽってりと丸く愛らしく、手に持つとむっちりとした重量感が指に伝わる。赤飯の粒がほんのりと顔をのぞかせるその姿に、思わず顔がほころぶ。食感は想像以上にふくよかで、もっちりとした皮が噛むごとに優しく口内を満たしていく。餡との対比も面白く、あずきの香ばしさが赤飯のほのかな塩気と寄り添い、噛むたびに広がる滋味に包まれる。 『とらや工房』を歩く時間は、まるで自然と和菓子が呼吸を合わせているかのよう。竹林を抜けた先に広がる静謐な建物、その中で職人が和菓子を仕上げる光景が、まさにこの場所の魅力を物語る。目の前で生まれる“できたて”の一体感、そしてそれを味わう贅沢。甘味の余韻、風の音——五感すべてが満たされていく。ここでしか体験できない和の時間が、心をゆっくりとほどいてくれる。 和菓子を愛する人も、ただ静かな時間を求める人も、一度は訪れてほしい。ご馳走様でした。 — とらや工房0550-81-2233静岡県御殿場市東山1022-1https://tabelog.com/shizuoka/A2204/A220402/22004106/