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2025.07.10 夜

西小山で出会う、即興ガストロノミーの愉しみ@caillou

フレンチ

東急沿線

10000円〜29999円

★★★★☆

西小山の商店街にある、フレンチビストロ『caillou(カイユ)』。2022年にオープンしたこちらの店は、本格フレンチの「ASAHINA Gastronome」の姉妹店にあたる。シェフを務めるのは安達晃一氏。フレンチの名門「ジョエル・ロブション」や「ASAHINA Gastronome」で研鑽を積んだ実力派で、ここではより自由で柔軟なアラカルト構成による“即興ガストロノミー”を追求している。料理が生まれる瞬間に立ち会うような、ライブ感のある一皿一皿。そんなエンターテインメント性が、この店の真骨頂だ。

料理は前菜からメインまで自由に選ぶスタイル。中でもメイン料理は、焼くか揚げるかなど、調理法まで相談しながら決められるのが面白い。もちろん、迷ったときにはシェフが的確にリコメンドしてくれるので安心だ。どれも魅力的で、ついもう一品と欲が出てしまう構成。その中には、店の顔とも言える定番料理も含まれており、自然と惹きつけられてしまう。ポーションの調整も柔軟で、無理なくいろいろ試せる自由度の高さも嬉しいポイントだ。

まずは「アミューズの盛り合わせ」から。赤パプリカのムースは、燻製香とマヨネーズ的なコクが口を優しくほぐし、ラタトゥイユは野菜の甘みと酸味が詰まった陽気な一口。豚足のテリーヌはぷるっとした食感に郷土のぬくもりを感じさせ、うずら卵とオリーブのピンチョスが塩味のアクセントを添える。ポテンシャルを確信するのに、十分なプレゼンテーション。

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前菜には店の定番、「Pâté en croûte(パテ・アンクルート)」を。生地の中に包まれるのは、牛・鹿・豚の挽き肉をベースに、きのこやピスタチオを混ぜ込んだ贅沢な構成。しっかりと焼き込まれた外皮の香ばしさと、しっとりと詰まった中身の旨味、そしてほんのりスパイスが香る余韻が絶妙に重なり合う。リーフサラダの爽やかさと、マスタードやピクルスの酸味がアクセントになり、クラシックな一皿を引き立てている。定番に据えられる理由が、ひと口ごとに伝わってくる。

見た目は完全にデザート、でも中身はまぎれもなく前菜。『カイユ』の定番メニュー「Crème brûlée de foie gras(フォアグラのクレームブリュレ)」は、キャラメリゼされた表面はパリッと香ばしく、ナイフを入れれば濃厚なフォアグラのクリームが顔を出す。甘みと塩気の絶妙なバランスに、ブリオッシュの香ばしさが寄り添い、心地よい食感の対比も演出。味変アイテムとして添えられるのは、オレンジとハチミツ、アニスを使ったソースと、林檎のピュレ。それぞれが甘やかに香り、まるで前菜とデザートの間を行き来するような余韻を残す。

「AYU Pate Brick(アユのパートブリック包み)」は、夏の香魚・鮎を丸ごと堪能できる前菜。身と肝を丁寧にさばいて詰めた春巻き仕立てで、皮はパリッと香ばしく、中からはほろ苦さと旨味が絶妙に絡み合う濃厚な味わいが広がる。添えられた骨の素揚げは、軽やかな食感と香ばしさでまさに鮎を丸ごと味わう一皿に仕立て、サステナブルな精神もにじむ。周囲には茗荷、万願寺唐辛子、胡瓜、水茄子といった夏野菜を薬味のようにあしらい、魚醤の塩味とともに全体の輪郭を際立たせる。和とフレンチの感性が共鳴する、完成度の高い前菜だった。

「Dauphinois en Croûte(ドフィノワ アンクルート)」は、フランス・サヴォワ地方のチーズ「ルブロション」を贅沢に使った一皿。じゃがいもを幾層にも重ね、パイ生地で包み焼き上げることで、外はサクッと中はホクホク、そしてとろけるチーズが全体を包み込むように溶け出す。サワークリームとエシャロットのソースが添えられ、重たさを程よく中和しながらコクを引き立ててくれる。温もりのある郷土料理に、きちんと洗練されたニュアンスを添える

メインの1つに選んだのは「Ris de veau(リ・ド・ヴォー)」のフリット。調理法は、シェフと相談のうえ。胸腺肉ならではのミルキーな旨味と、しっとり柔らかな質感を、サクサクと香ばしい衣が包み込む。重さを感じさせない絶妙な火入れで、口の中にじんわりと広がる旨味の余韻が心地よい。添えられた茹で卵のタルタルはコクと酸味のバランスが秀逸。

最後は、肉好きを唸らせる主役、「SAKAEYA リブロース」。精肉の匠・サカエヤ新保さんが手がけた熟成リブロースを使用。焼き面から立ち上がる熟成香は芳醇で、ナイフがスッと入る柔らかさと赤身の旨味の力強さが共存する。付け合わせの焼茄子やズッキーニが重層的な満足感を支え、塩と胡椒だけで引き出す素材本来の力。ばちくそ、うまい。

合わせたワインは「Gevrey-Chambertin 2020 / Kei Shiogai」。ブルゴーニュ・ポマール在住の塩貝圭氏が手がける1本で、限られた生産本数からもその希少性がうかがえる。気品ある果実味と穏やかなタンニン、そしてふわりと立ち上るミネラル感が、クラシックな料理たちと見事に調和。特にフォアグラや熟成肉との相性は言わずもがなで、料理の輪郭をより美しく引き立ててくれた。

料理の即興性と構成力、そして一皿ごとの完成度。『caillou』には、クラシックを尊重しながらも、今この瞬間の“美味しさ”を更新し続けるエネルギーがある。西小山という落ち着いた街の中で、自分のペースで料理と向き合える心地よさも魅力のひとつ。気取らず、でも記憶に残る。そんなビストロだ。ご馳走様でした。

caillou
03-6452-2985
東京都目黒区原町1-7-9 ドゥーエ西小山 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131710/13279829/

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