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2025.07.05 夜

一隅を照らす焼鳥の灯火、根津にて。@根津 焼鳥 照隅

焼鳥・焼きとん

上野・浅草・日暮里

10000円〜29999円

★★★★☆

根津駅のすぐ近く、穏やかな通り沿いに暖簾を掲げる『焼鳥 照隅』。屋号は、最澄の「一隅を照らす」に由来し、小さな光でも人を照らす存在でありたいという想いが込められている。店主・杉本浩一郎氏は、比内地鶏専門の名店『蘭奢待』で修業を積み、さらにはイタリアンの経験も重ねた人物。その背景を踏まえれば、焼鳥という枠を超えた一皿一皿の表現にも納得がいく。

主軸はもちろん「比内地鶏」。一羽丸ごと余すことなく使い切り、それぞれの部位をそれぞれに最適な調理と薬味で構成する。「ふりそで」は脂の甘みとむちっとした弾力が特徴で、

「砂肝」は比内らしい大ぶりなサイズでザクザクとした快感。

「せせり」にはホースラディッシュの刺激を合わせ、脂のコクにシャープな輪郭を加える。

「うずら卵」はフランス産のエルフランス種。濃厚な黄身がとろける半熟の火入れは、もはや職人芸。

「あか」にはマスタードシードの香りをまとわせ、変化球的なアクセントも忘れない。

脇を固める小皿料理たちもまた、焼鳥屋の粋を軽々と超えてくる。「ささみ昆布締め」は、潤菜、叩きオクラ、枝豆とともに昆布出汁のジュレで包まれ、清涼感ある序章を飾る。

「白瓜と鶏の土佐酢和え」は、ケッパーが練り込まれており、和と洋の交差点を感じさせる一品。

「ポテトサラダ」は手羽先の燻製といぶりがっこの香り、さらにカレーリーフとマイクロハーブのアクセントで完成度を高めている。

「白レバー」は臭みの一切ないクリアな旨味で、濃厚でありながら上品。

そのレバーを使った「白レバーのパルテ」は、生クリームと塩、はちみつ、シナモンを効かせた濃密な味わいで、まるでデザートのよう。

「甘長唐辛子の肉詰め」は白湯ソースが優しい余韻を残し、

「ハラミのポン酢和え」は九条ネギとカボスの香りで爽快感を生み出す。

箸休めの「糠漬」はそのタイミングも計算されたもの。

「大葉味噌」は素朴ながらも酒が止まらなくなる一品。香りと塩気のバランスが絶妙で、串物と串物の間をつなぐ名脇役。

「とうもろこしのすり流し」は水と塩だけで仕立てたとは思えない甘さの余韻が心地よい。

「つくね」はキンカンの醤油漬けとともに供され、口内で調理されるような濃厚さが広がる。

「手羽先」は燻製の香りが立ち、皮目のパリッと感と中のしっとり感のコントラストが見事。香ばしさと旨味が一体となり、シンプルながら記憶に残る一串。

締めには「チキンカレー」と「そぼろの混ぜご飯」。カレーは燻香といぶりがっこの香りが広がるスパイシーな一皿で、さっぱりとしながらも余韻が深い。

「そぼろご飯」はキンカンのぷちっとした食感がアクセントとなり、心地よい満腹感で幕を閉じる。

デザートの「バニラアイス」は卵のコクがしっかり感じられ、

「グラニテ」は桃の清涼感で、最後まで抜かりがない。

『焼鳥 照隅』。その名の通り、派手ではないが確かな光を放ち続ける料理の数々。焼鳥を“串”ではなく“コース”として捉え直すアプローチ。静かに、でも力強く。ここには確かに、一隅を照らす灯りがある。ご馳走様でした。

根津 焼鳥 照隅
050-5600-1784
東京都文京区根津1-1-21
https://tabelog.com/tokyo/A1311/A131106/13182104/

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