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2025.06.30 夜

異なる産地が一つになる、十割そばの設計図@流山 すず季

そば

柏・松戸

3000円〜4999円

★★★★☆

千葉・流山の住宅街に、静かに暖簾を掲げる蕎麦の名店『流山 すず季』。創業は1988年。店主・鈴木宏富氏の蕎麦にかける情熱は、畑から食卓までを自らの手で完結させるほど。農家に通い続け、自らも畑を耕し、収穫し、天日で干し、石臼で挽く。まさに“蕎麦の一生”を手の内に収める人だ。

「今昔そば(二色もり)」は、繊細な「生粉打ち」と、力強い「田舎そば」の競演。前者には、福井の永平寺、宮崎高千穂、島根の出雲という三つの産地から届いた玄そばを絶妙にブレンド。香り、甘み、歯触りのバランスを設計し、奥行きある味わいを実現している。ブレンドの妙が、味に重層性をもたらし、一口ごとに表情を変える。

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「田舎そば」には茨城県ひたちなか産の玄そばを使用。粗挽きならではの野趣と香ばしさがあり、噛むごとに蕎麦の輪郭がはっきりと現れる。これを支えるのが、蕎麦ごとに調整された“かえし”の存在。生粉打ちには出汁の輪郭が際立つ柔らかなつゆ、田舎そばにはひたちなかの蕎麦の力強さに負けない濃いめのかえし。二枚の蕎麦、それぞれに設計されたつゆが、食べ比べの妙を一層引き立てる。

「ちょこっと天ぷら」は、海老一本と野菜たち。ヤングコーン、ししとう、舞茸、そして皮をむいてとろけるように仕上げた茄子。揚げ油は10人前ごとに交換されるという徹底ぶりで、衣は驚くほど軽やか。特に茄子の火入れには心を打たれるものがあり、蕎麦の余韻を優しく支える。

『流山 すず季』は、蕎麦の香りを研ぎ澄ませ、風味のレイヤーを重ねることで、十割そばに新たな表現を生んでいる。素材の力と、それを活かす設計力。すべてが自然体で、押しつけがましくなく、それでいて深く記憶に残る。蕎麦という名の静かな芸術を、じっくり味わってほしい。

ご馳走様でした。

流山 すず季
050-5597-3519
千葉県流山市西初石3-1-17
https://tabelog.com/chiba/A1203/A120305/12003116/

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