2025.06.13 夜 ここに、未来の一貫がある。@在掌 寿司 福岡市 10000円〜29999円 ★★★★☆ 福岡・西中洲、凛とした静寂に包まれた一角に佇む『在掌(ざいしょう)』。名店「鮨さかい」の三号店として2023年に誕生し、店名には禅語「明珠在掌」――“本当に大切なものはすでに己の手の中にある”という想いが込められる。まさに、“鮨の本質は職人の手の中にある”という哲学の体現だ。 この日、握りを務めたのは水鳥川英氏。若手ながら、その所作は堂々たるもので、丁寧な握りとおもてなしの温度感は、グランメゾンさながらの品格すら漂わせる。しかも接客は礼節を重んじながらも心地よい間合いで、育成という教育哲学の結晶が接客にも表れている。気持ちの良い空気に、自然と背筋が伸びる。 前半は摘みからスタート。「太もずく(沖縄)と枝豆」の清涼感から、 「甘海老(石川)、蛸(志賀島)」、 「鮑(福岡)、水いか、紫雲丹(北九州)」と、地域性を活かした小品の連なり。 特筆すべきは「ぐじ(福井)の若狭焼き」。皮目の香ばしさと身の甘さが絶妙なバランスで交錯し、 続く「鮟肝(余市)と奈良漬」はさかい系の定番たる濃厚な甘味とコクで、一気にお酒が恋しくなる。 握りは、槍烏賊から幕を開ける。 「平目(福岡)」の塩締めで鮨の輪郭を描き、 「伊佐木(長崎)」 「白バイ貝(島根)」と、歯応えと香りを自在に操る。 「鯵」は、葱と生姜を効かせた酒飲み仕様の組み立てだが、いやはや、本能に訴えかけてくる旨さ。 これは刺さる。続く「時鮭(根室)」と 「目抜け(北海道)」で旨味の波が押し寄せ、 山形の「赤身」 「大トロ」(延縄・同個体)でクライマックスの熱量を高めていく。 「北紫雲丹」では、口内に磯の香りがふわりと広がり、 「穴子」の柔らかな余韻へ。 そして、締めの「トロタク巻き」 「玉子」でエピローグを美しく飾る。 シャリは赤酢系で、温度や硬さは絶妙な中庸。水鳥川氏の握りはまだ研鑽の途中ながら、そのバランス感覚と素材の扱いはすでに一級の片鱗を覗かせる。この内容で22,000円。だが、それも“在掌”のコンセプトゆえ。“若手に託す”“鮨を伝える”という行為自体が、美食の未来への投資であり、それを体験する我々はまさに育ちを味わうという贅沢をしているのだ。 ご馳走様でした。 — 在掌092-726-6289福岡県福岡市中央区西中洲3-20 LANEラウンドビル 2Fhttps://tabelog.com/fukuoka/A4001/A400103/40067936/