2025.06.12 夜 酒を知って、初めて見えた世界@三谷 寿司 四ツ谷・市ヶ谷・飯田橋 50000円〜 ★★★★★ 鮨三谷――“予約困難店”という概念が浸透するよりずっと前から、その中心にいた存在。2006年に三谷康彦氏が四谷三丁目に本店を構え、日本の鮨界に“ペアリング”という新たな可能性を持ち込んだパイオニアである。氏の哲学は一貫していて、「鮨は進化するものである」という信念が、ネタの選び方から提供の順序、酒の合わせ方に至るまで徹底されている。 その真骨頂が表れるのが、鮨と酒のマリアージュ。シャンパーニュにはジャック・セロス、白ワインにはコント・ラフォン、赤にはジョルジュ・ルーミエやアルマン・ルソー。さらには日本酒には十四代、それも希少な「龍泉」や「龍月」が並ぶという贅沢の極み。これらが単に揃えられているのではなく、料理との相性に基づいて最適な瞬間に供されるというのが、三谷の恐るべき完成度を物語っている。 つまみからその哲学が全開だ。萩産の「紫雲丹」は甘みがふわりと広がり、濃厚でいて嫌味のない透明感。 青森県大間産の「牡丹海老」は、白醤油と山葵との相性が完璧。 千葉県産の「鮑」は肝ソースのコクと柔らかさが絶妙で、 三谷氏の出身でもある千葉県銚子産の「黒ムツ」は脂と衣の香ばしさがワインを呼ぶ。 北海道函館産の「毛蟹」はねっとりと味噌の旨味が絡み、 「鰹」は揚げた鰹節のチップスの香りは、出汁感のあるブルゴーニュとの絶対的な相性を作る。 「白海老と帆立貝のかき揚げフライ」は軽やかな衣と海の甘さのバランスが美しく、白ワインが自然と欲しくなる。 ここから握り。 淡路産の「墨烏賊」は肉厚で上品な甘みがシャリと溶け、 「真子鰈」は昆布の香りがしっかりと浸透。 「ホシガレイのエンガワ」は脂の質がよく、味わいに奥行きがある。 「鮪、大とろ」 「赤身漬け」「名物とろ巻」すべて新潟県佐渡産のマグロで構成され、赤ワイン――特にルソーとの相性が異次元の体験をもたらす。 「紫雲丹」は、漁場違いのウニを重ねるという挑戦的な握りで、複雑な旨味が折り重なる。 江戸前の「穴子」はツメと塩で2種。どちらも素材の持つ甘味や香りを巧みに引き出していた。 北海道小樽産の「蝦蛄」は芳醇な味わいが印象的で、 「カマトロ」も佐渡産。ワインと対等に渡り合う存在感だった。 7年ぶりの再訪。変わったのは三谷ではなく、きっと自分自身。以前よりも酒の世界に関わるようになったことで、彼の組み立てるペアリングの奥深さにようやく追いついた。鮨と酒、その双方を知ることで見えてくる世界がある。鮨三谷――ここは“鮨と酒の未来”が立ち現れる場所。人生のどこかで必ず訪れるべき一軒だ。ご馳走様でした。 — 三谷03-5366-0132東京都新宿区四谷1-22-1https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130902/13042204/