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2025.06.07 夜

家族で紡ぐ栃木ガストロノミー@オトワ レストラン

フレンチ

宇都宮・鹿沼

10000円〜29999円

★★★★☆

宇都宮の地に根差し、1981年に創業した老舗フレンチ『オトワ レストラン』。その名は創業者・音羽和紀シェフの姓に由来し、現在はその意志を継いだ息子たちが中心となって厨房に立つ。兄・音羽元氏、弟・音羽創氏、らに、兄の妻がパティシエを務めるなど、家族全員が力を合わせて紡ぐガストロノミー。実践するのは、栃木のテロワールを世界の技で表現すること。ローカルとグローバルが同居する、そんな哲学がこの店の芯にある。

洗練されたガラス張りの空間には自然光が優しく差し込み、まるで美術館のような静謐さ。厨房の様子がガラス越しにすべて見える設計も見事で、料理のライブ感が五感を刺激する。そしてそこで生まれる料理たちは、どれもが美しいだけでは語れない。素材、構成、香り、技術——そのすべてが見事に調和している。

たとえば、アミューズの「エルダーフラワーのボンボンゼリー」は、口の中でパチンと弾ける清涼な香りの導火線。まさに夏の花火のような幕開け。

そして「大根のタルト」は、切り干し大根を練り込んだ生地が香ばしく、ピクルスやチーズクリームと絡んで、滋味深くもモダンな一口に。

「仔羊のアメリカンドッグ風」は、黒石の器から異国の香りが立ち上る遊び心の塊。一口で旅するような香りと味の組み合わせにうならされる。

「神杉・苺のそうめん」は、奈良の三輪素麺と栃木のとちあいかという異素材が、トマトソースとハーブの力で滑らかに一体となる芸術品。香り、甘み、酸味が舌の上で踊り出す。

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「栃木旬野菜の一皿」は、畑をそのまま食べる感覚。ホエーにコンソメ、バターの奥行きが加わり、根菜の甘さと温もりに心がほぐれる。「オマール海老」は絶妙な半生レア火入れに、みかんと柑橘の二重奏。甘味と酸味の交差点に料理人のセンスが光る。

「蝦夷アワビのパイ包み」は、帆立ムース、焼き海苔、肝ソースという層の構造美にうならされる一品。一番出汁とバターのソースが尋常じゃなくうまい。和と仏の融合がここに極まる。

「鰆とわさび菜」は、ふわっと仕上げた鰆にわさび菜ソースの青さが重なり、最初の戸惑いを蛤の出汁が静かに解いていく。生姜の余韻がまた素晴らしい。

「和牛フィレと桜エビ」は、とろけるような火入れのフィレ肉に新玉ねぎのキャラメリゼが甘く香る。桜エビのパウダーを使った副菜が、まさに“ただの付け合わせじゃない”存在感を放つ。

「ウフ・ア・ラ・ネージュ」は、ココナッツの泡、磨宝卵のカスタード、栃木のメロンと青リンゴで構成された涼やかな菓子。酸味と香りのバランスが秀逸だ。

ミニャルディーズまで丁寧で、まるで宝石のように愛らしい。

かつてアラン・シャペルに学び、日本にその技と精神を持ち帰った父・和紀シェフ。その遺伝子を受け継いだ息子たちは、今やその世界観を新たな時代へと進化させている。技術だけでなく、素材への誠実さと、何よりも“家族”という一貫性がこのレストランの芯を支えている。

総じて、『オトワ レストラン』は栃木の風土と家族の物語が一皿に宿る場所。料理が単なる食を超え、記憶に、感情に、深く刻まれる。ここにしかない一体感、ここでしか味わえない感動がある。間違いなく、わざわざ行く価値がある一軒。ご馳走様でした。

オトワ レストラン
028-651-0108
栃木県宇都宮市西原町3554-7
https://tabelog.com/tochigi/A0901/A090101/9002357/

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