2025.05.23 昼 一滴の油に宿る、フレンチ仕込みのとんかつ@揚雫 とんかつ・揚げ物 神奈川 3000円〜4999円 ★★★★☆ 横浜・山下町の路地裏にひっそりと佇む『揚雫(ヨウダ)』。その名の通り、揚げ物の一滴一滴にまでこだわったような、完全予約制のとんかつ専門店だ。店主が掲げるのは、最高到達点で料理を提供するという信念。その哲学は、予約や提供の仕組みにも反映されている。 フレンチの経験を持つという店主。その経歴を知れば納得だ。油の温度管理、火入れ、余熱による仕上げに至るまで、まさに精密機械のような一皿。トンカツというより、もはや一つの料理作品だ。 いただいたは、TOKYO Xのヒレ。低温でじっくりと火入れされた豚肉は、衣を纏いながらも驚くほどのしっとり感とピンク色の艶を保っている。湿度と香りを逃さぬよう、基本はカットを施さない。その状態でここまで柔らかいとは、素材と技術の融合に拍手を送りたい。塩や山葵などの調味料も脇役に徹し、肉そのものの滋味を引き立てる構成だ。 そして面白いのが、ご飯や味噌汁が登場する流れ。まずは“トンカツそのもの”と対峙させる意図的な設計であり、料理への集中を誘う。炊き立ての米は粒立ちが良く、 味噌汁はマッシュルームやなめこなど数種の茸が複層的な旨味を生み出す。キャベツの瑞々しさも忘れずに記しておこう。 “とんかつ”という庶民的な看板を掲げながら、提供されるのは限りなくフレンチに近い構成美と静謐な美意識。その矛盾が、この店の魅力だ。妥協なき緻密な料理。整った空間。整った気配り。『揚雫』は、まさに完成度の高さで勝負する一軒である。ご馳走様でした。 — 揚雫050-1724-1232神奈川県横浜市中区山下町25-16 ニューポートビル 101https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140104/14082436/