「おいしい」を、
すべての人に。

検索

2025.05.20 夜

埼玉の食材で奏でる、味のシンフォニー@RESTAURANT SALT

フレンチ

さいたま市

10000円〜29999円

★★★★☆

浦和の住宅街にひっそりと佇む『RESTAURANT SALT』。その名の通り、塩のようにシンプルでありながら、料理の本質を引き立てる存在を目指すこの店は、2019年に井上憲シェフによってオープンされた。レコードコレクターから料理人へと異色の転身を遂げた井上氏は、日本橋の老舗洋食店「たいめいけん」で基礎を学び、南青山の名店「NARISAWA」で8年間研鑽を積んだ経歴を持つ。店名には「Soul And Local Treasure」の頭文字が込められ、地元埼玉の食材と魂を大切にする想いが表れている。

その序章を飾るのが、「鴨レバー × クレソン」。レコード盤に見立てたプレートに、ダイヤモンドの針を象るように乗せられた一品。カリッと焼かれたクルトンの上には、臭みのない鴨のリエット。爽やかなケッパーとクレソン、ひとくちで、料理のリズムが走り出す。濃厚な味わいにシャンパンと合わせたくなる。

続いて「アオリイカ × スナップエンドウ」。細やかな包丁を施されたアオリイカは、口の中でほどけるような柔らかさと甘味を携える。岩槻産のスナップエンドウは、サヤまでピュレに仕立てられ、野菜の生命力をそのまま皿に表現。レモンの泡が清涼感を与え、エシャロットとオリーブオイルが風味に奥行きを。塩の効かせ方にもブレがなく、野菜と海の幸の邂逅を見事に演出していた。

スペシャリテとして供された「葱 × 鴨油」は、この日のハイライトと言っていい一皿。主役は埼玉・深谷のねぎ。鴨のオイルでじっくりとコンフィにされたそれは、噛むほどに甘味と旨味がにじみ出し、「ねぎって、こんなに美味しかったのか」と驚きを覚える。炭のパウダーが香ばしさを、生姜がほのかな清涼感を添え、まさに“鴨葱”の理想形を描いている。

次に登場したのは、「グリーンアスパラ × はまぐり」。入間産のグリーンアスパラと、桑名の蛤を組み合わせた春の香り漂う一皿。蛤はチキンブイヨンでじっくりと炊き上げられ、白ワインバターと卵黄を使ったまろやかなソースで包み込む。そこに岩槻産のルッコラと大葉のピュレが加わり、爽やかな緑の余韻を演出。散りばめられた粒マスタードのソイルは、まるでテロワールを表現するような遊び心。

「桜海老タリアテッレ」は、自家製の手打ちパスタに、ブイヤベースとトムヤムクンを融合させたユニークなソースを合わせた一皿。そこに魚醤コラトゥーラの旨味と、パクチーの爽やかな香りが加わり、東南アジアと地中海の架け橋のような味わいに仕上がっている。桜海老の香ばしさが全体を包み込むが、ソースは塩気がかなり強め。

魚料理は江戸前の「太刀魚」。ふっくらと焼き上げたポワレ仕立て。バターとチキンブイヨンで旨味を重ねた上に、白味噌と柚子胡椒を効かせたソースを添え、西京焼きを思わせるような和洋折衷の趣。仕上げに振られたカラスミが、塩味と香りの奥行きを一層引き立てる。

メインディッシュの「牛」は、埼玉・国分牧場のランプ肉を使用した一皿。しっとりと火入れされた赤身肉からは、どこか薪を思わせる香ばしさが漂い、食欲を一気に刺激する。ポート酒と赤ワインのソースがコクを加え、添えられた蕪はその甘みと力強さで、主役の座を脅かす存在感。埼玉の食材がここまでの表現力を持つとは。

デザートは、埼玉県産のフルーツトマト「おかべうまかんべ」を使った一品。バニラとバターで火入れされたセミドライの果物に、ジュレが添えられており、爽やかな締めくくりとなった。

『RESTAURANT SALT』は、埼玉の食材を中心に、シェフの独創的なアイデアと確かな技術で構成されたコースを提供している。特に、スペシャリテである深谷ねぎの一皿は、訪れる価値がある逸品。埼玉のポテンシャルを再認識させてくれる、素晴らしいレストランだった。ご馳走様でした。

RESTAURANT SALT
050-5600-9668
埼玉県さいたま市浦和区高砂4-4-19 TACビル1F
https://tabelog.com/saitama/A1101/A110102/11049271/

エリア

ジャンル

価格帯

評価

月別アーカイブ