静岡県・菊川市。山に囲まれたこの静かな町に、全国の食通が密かに通う一軒がある。
それが、『西欧料理サヴァカ』。ジャンルで言えばフランス料理。だが、その実態は“ジビエ”というキーワードにおいて、日本でも類を見ない圧倒的な深度を誇る料理店だ。厨房と猟師との信頼関係に支えられ、地元の山で仕留めた獣たちは、ここで初めて「料理」として命を輝かせる。肉を活かすための低温調理、香りを立たせるスパイス使い、脂や血のニュアンスまでも計算されたソース──ただ珍しいだけじゃない、“旨いジビエ”をここまで成立させた店が、静岡の山あいにあることに、まず驚かされる。

テーブルに置かれたリストには、猪、鹿、鴨などの定番に始まり、ツキノワグマ、ヌートリア、ハクビシン……と、山の住人たちがずらりと並ぶ。もはや狩猟図鑑。でも驚くべきは、このリストが単なる話題性ではなく、きちんと“味”として構成されていることだ。しかも、“ジビエはクセが強い”──そんな常識を優しく覆す。きっと全てが“食べ頃”を見極めて仕留められ、しかるべき処理を経て、厨房に届くのだろう。きめ細かい繊維と脂の香り、そして野性味の奥に潜む複雑な旨味が広がる。

それでは、さっそく静岡の森が織りなすフルコース、じっくりご覧いただこう。
「ヒヨドリ」
1つ目のアミューズは、ソテーしたヒヨドリ。脂の旨みに玉ねぎのコクやスパイスを重ねる。

「雉」
2つ目のアミューズは、雉の焼き霜入りの蕪スープ。コンソメのジュレやレモングラスのオイルを重ねる。仕上げに、蜂の巣状の竹墨のジャガイモを乗せて、ユニークに炭の香を感じさせる。

「鹿、猪、鴨」
最後のアミューズは、ジビエが共演したシュー・ファルシ。鹿はレバーで、ムースは猪と鴨、ブロック状に乗せたのは鹿タン。

「猪、鹿、キジバト」
ジビエシャルキュトリーのサラダ仕立て。猪のハート、ヤークトブルスト、ブータンノワール、鹿のソーセージ、キジバトのコンフィ。バルサミコ酢の泡を重ねて。ジビエの1つ1つの個性ももちろんだが、野菜のクオリティーも高い。

「野うさぎ、ハクビシン」
野うさぎは野生味があって、ハクビシンは脂の甘味が特徴。特に後者は、上質な豚って感じ。付け合わせにはタラの芽やこごみのフリット、アミガサタケで作ったというソースが美味い。山の恵み達の再会。

「真鴨、カルガモ」
前者はロティに、後者はコンフィに。檜の香りの胡椒を添えて、森の中へと誘う。

「ヌートリア」
トマト煮込みのソースのパスタ。手打ちでつるんとした口当たりのいいパスタ。ヌートリアの柔らかい肉質とクリアな味わいは鶏のイメージに近い。

「鹿、仔猪」
仔猪(右)の脂の旨みとどんぐりのような香ばしい香りが印象的。まるでイベリコ豚のよう。

「アライグマ、ツキノワグマ」
アライグマ(左)は煮込みで、クマ(右)はロティと煮込みで。クマの脂って本当に甘くて美味しいなぁ

「猪」
ほろ苦い蕗の薹のご飯と猪のガランティーヌの組み合わせ。

静岡の山に息づく命が、ここ『サヴァカ』では料理として再構築され、舌の上で物語を紡ぎ出す。それぞれの獣たちに寄り添う技術と発想、そして驚くほどの食べやすさに、ただただ脱帽。ジビエの概念を更新する体験が、菊川のこの地で待っている。山と料理人がつながると、こんなにも豊かな世界が広がるのか。ご馳走様です。
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西欧料理 サヴァカ
050-5596-3072
静岡県菊川市沢水加791-11
https://tabelog.com/shizuoka/A2203/A220303/22001284/