2025.04.13 夜 火のぬくもり、人のぬくもり。@居酒屋 ちょーちょ 居酒屋・定食 仙台市 5000円〜9999円 ★★★★☆ 仙台の夜を知る人なら、きっと誰もが名前を挙げる居酒屋がある。『ちょーちょ』──店内はいつも満席、電話も鳴りやまず、席にありつけるかはタイミング次第という人気店だ。その魅力は、料理の美味しさはもちろん、空間全体に流れる温かさと心地よさ。その中にあって、この店の象徴とも言えるのが、囲炉裏の存在だ。 カウンター中央に構えられた囲炉裏では、串を立ててじっくりと焼かれる魚たちが、静かにその香りと美味しさを膨らませていく。仙台は、炉端焼き文化の発祥地とも言われる場所。その文脈を意識したかはさておき、『ちょーちょ』がこのスタイルを大切に守っているのは偶然ではないだろう。 ぜひ味わってほしいのが「とろ鰯の塩焼き」。脂がじゅわりと染み出し、名前に偽りなく“とろける”一尾。一人一本、いや二本でも足りないと思わせる逸品。食べ終わった骨は素揚げにして再提供。最後の最後まで美味しく、無駄なく。 料理は冒頭から手を抜かない。この日のお通しは「海老真薯の蓮根挟み揚げ」。熱を通しすぎず、ふわっとした真薯の中に海老の甘さ。サクッとした蓮根の食感もよく、ひと口目から心をつかまれる。 「お造り」は、胡麻勘八、本鮪、金目鯛、初鰹、浜茹で蛸、とろ鰊の六種盛り。どのネタも素材の魅力を引き出す工夫が光る。脂の強いとろ鰊にはガリを添えるなど、単に“醤油でどうぞ”では終わらせない、細やかな設計が嬉しい。 「アジフライとポテトサラダ」は同じ皿に並べられるが、それぞれが独立した魅力を放つ。アジは小骨を丁寧に取り除いたふわふわの仕上がり。衣の立ち具合が美しく、火入れの技が光る。 「茄子の揚げ浸し」は温度感をおさえ、じんわりと出汁が染みる常温の設え。優しさと落ち着きを感じる一品。 そして名物「土鍋炊き 塩むすび」へ。宮城県産ひとめぼれを使用した炊きたてご飯を、熱々のうちに手で握る。 かなりの熱さだろうが、それでも笑顔でポーズを決めるスタッフの姿に、この店のホスピタリティの本質を見る。仕上げに海苔を囲炉裏で炙る演出もまた、香りと温かみを添えてくれる。日本人であればこれ以上の締めを求める人もいないでしょう。笑 火と人の距離が近い店、そこに宿るのは技術だけではない。“うまい”だけじゃない、“うれしい”がある店。『ちょーちょ』は、そんな感情を思い出させてくれる一軒でした。ご馳走様です。 — 居酒屋 ちょーちょ022-395-9150宮城県仙台市青葉区国分町3-4-21 第2旭ビル 105https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4025521/