2025.04.12 夜 虹の名をもつ、仙台の名バー。@バー アルカンシェル バー 仙台市 3000円〜4999円 ★★★★☆ ビルの地下、ひっそりと灯る円形のサイン。『バー アルカンシェル』──その名は、フランス語で“虹”を意味する。カクテルの色彩、空間の佇まい、そしてバーテンダーの所作。全てがこの言葉に呼応するように、美しく調和している。 創業は1996年。以来、仙台・国分町の夜を静かに照らし続けてきた、名高きオーセンティック・バーだ。空間はクラシックそのもの。木の温もりと間接照明に包まれ、時がゆっくりと溶けていくような静謐さ。主役はやはりカウンター。バーテンダーの手元を眺めるだけで、一日の疲れがすっと溶けていく。 まずは「苺のフローズンカクテル」。ふんわりと曇ったグラス、赤く色づく果実のヴェール。その美しさの時点で、もう味は確信できる。いちごの甘酸っぱさに、ウォッカの清涼感が寄り添い、最後に残るのは、口内にゆっくり広がる余韻の深さ。飲み物でここまで心を動かされる体験は、そう多くはない。 続く「モスコミュール」も印象的。銅製のマグに満ちる氷、その冷たさと対照的に、ジンジャーの辛味とライムの酸味が熱を帯びて迫ってくる。スタンダードながらも、グラスの中で小さな革命が起きている。細部に神経が行き届いた一杯は、職人の技術と誠実さの証そのものだ。 接客は控えめながらも柔らかく、初訪問であってもどこか懐かしい安心感。バーテンダーの距離感が絶妙で、空間そのものが“居心地”として完成されている。まさに、店名が意味する“虹”のように、多彩でありながら調和のとれたひととき。『バー アルカンシェル』は、日常にふと現れる光のグラデーションのようなバー。静かな夜に、そっと寄り添う美しい一杯を求めるなら、間違いなくこの場所だろう。ご馳走様でした。 — バー アルカンシェル022-712-6285宮城県仙台市青葉区国分町2-10-21 邦栄ビル B1Fhttps://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4000064/