2025.04.12 昼 食材の価値を更新する一杯@仙台中華そば 銘店嘉一 国分町店 ラーメン・つけめん 仙台市 1000円〜2999円 ★★★★☆ ラーメン界において、親鳥は“硬い”“臭い”と敬遠されがち。市場では脇役、時には“廃鶏”という不名誉な呼び名さえ与えられてきた。だが、それは素材のせいではない。手間と技術を惜しむ側の都合だ。調理の腕があれば、親鳥は素晴らしい出汁素材であり、最高のチャーシューにもなり得る──仙台・国分町の『仙台中華そば 銘店嘉一 国分町店』は、そんな親鳥の逆転劇を描く舞台だ。 看板の「中華そば」は、親鳥だけで引いた清湯スープ。淡い黄金色に輝く表面からは、鶏脂の旨味が静かに香り立つ。塩と醤油の二択から選べるが、ここでは“醤油”を強く推したい。親鳥由来の香ばしさと、コク深いタレの重なりが見事に調和し、舌の上で多層的な旨味を織りなす。透明感がありながら、骨太。純鶏系スープの可能性を体現した一杯だ。 チャーシュー代わりにのるのも、もちろん親鳥の肉。しっとり柔らかいわけではないが、それがいい。繊維質な肉質をじっくりと咀嚼することで、じわじわと滲み出る旨味と香りが広がっていく。ひと噛みごとに、鶏という素材の奥深さが浮かび上がる。まさに“噛んで楽しむチャーシュー”。麺はやや太めで手打ち風のコシがあり、スープとの絡みも申し分なし。加水率のバランスも良く、食感の満足度が高い。 そして注目すべきは、ラーメンに添える“ご飯もの”。まず「鶏皮」。親鳥の皮を甘辛く煮付けた小鉢で、噛むほどにタレの旨味と鶏脂が滲み出す。これがもう、白飯に合わないはずがない。 さらに「鶏飯」。こちらは炊き込みご飯スタイルで、親鳥の肉とごぼうの香りがしっかりと染み込んだ一膳。米のひと粒ひと粒に鶏の出汁が宿っており、噛むたびに土の香りとコクがじんわりと湧き上がる。 評価されなかった素材に、もう一度、光を当てる。そんな静かな決意が、この店の一杯には滲んでいる。派手さはない。だが、素材と真摯に向き合う料理人の誠実さが、舌と心にしっかりと残る。食材の“価値”を更新するような一杯──それが、『嘉一』のラーメンなのだ。 ご馳走様でした。 — 仙台中華そば 銘店嘉一 国分町店022-265-5907宮城県仙台市青葉区国分町3-8-12https://tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4009075/