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2025.04.11 昼

カツとカレーのちょうどいい関係@とんかつ 九六喜

とんかつ・揚げ物

秋葉原・神田・水道橋

1000円〜2999円

★★★☆☆

神保町にある『とんかつ 九六喜』。老舗が連なるこの街のなかで、モダンでどこか新しい風を吹かせている一軒だ。カウンター中心の明るい店内には、センスよく整えられた調味料が並び、随所に店の設計思想がにじむ。

看板メニューの「謹製スパイスロースカツカレー」。

いわゆる「カツカレー」という響きから想像するものとは少し違う。神保町らしいアレンジ精神と、肉へのこだわりが共存した、ユニークなアウトプットだ。ご飯を挟んでとんかつが両側に配置され、片側にはスパイスカレーを。もう片側は塩やソースで“とんかつ単体”として楽しませるハーフ&ハーフな構造。とんかつとカレー、どちらが主役か決めきれない欲張りな気持ちを肯定してくれる。

使用されているのは栃木県産の「ヤシオポーク」。断面にはうっすらピンクが差し、レアに仕上げられた火入れの妙技に唸る。脂はとろけるように香り高く、赤身はジューシーで、余分な水分を感じさせない凝縮感がある。そしてパン粉は、都内唯一のパン粉専用工場「中屋パン粉」のもの。油切れがよく、サクッと軽快な歯ざわり。厚切りロースでも重く感じさせない理由はここにあるのかもしれない。

そして、特筆すべきはスパイスカレーの存在感。ココナッツを思わせる甘やかでクリーミーな香り、複数のスパイスが織りなす奥行き。辛さは控えめで、とんかつの甘味や脂としっかり調和する設計になっている。エスニック過ぎず、和風にも寄りすぎない、絶妙なバランス。一般的なカツカレーのような一体化ではなく、それぞれが自立したまま、丁寧に歩み寄ってくる印象だ。

カレーの街・神保町で、とんかつ屋としての矜持を忘れずに、スパイスの香りと歩み寄る。まっすぐで、ちょっとひねりの効いたその在り方に、この街らしさを感じずにはいられない。

ご馳走様でした。

とんかつ 九六喜
050-5594-6327
東京都千代田区西神田2-1-3 トービケンビル 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1310/A131003/13297340/

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