2025.04.08 昼 百年越しの久寿餅@住吉屋総本店 デザート 川崎市 〜999円 ★★★☆☆ 川崎大師の参道から少し離れた静かな通り沿いに、『住吉屋総本店』はそっと佇んでいる。創業は明治20年。門前町のにぎわいとともに歩み、地域に根ざして百年以上の歴史を重ねてきた老舗の甘味処だ。 提供されるのは「久寿餅(くずもち)」。その名は、江戸時代・天保年間の逸話に由来するという。偶然発酵した小麦で作られたこの餅を、川崎大師の高僧が風雅な味と評し、考案者の名にちなんで“久寿餅”と名づけた──そんな物語がこの一皿の背後にはある。川崎大師ならではの縁起菓子として、今も変わらず受け継がれている。 まず目を引くのは、その盛り付けの美しさ。小さな餅が円を描くように配置され、中心にはとろみのある蜜と香ばしいきなこが添えられている。手を自然と中央に導くこの構成は、食べやすさへのちょっとした工夫にも見える。 餅はもっちりとした弾力があり、噛みごたえをきちんと残した設計。あえて均一に整えすぎないフォルムも、手仕事の温かみを感じさせる。蜜の甘さはやや強めだが後を引かず、きなこの香ばしさとともに素材の味を引き立てる構成。餡などで包まず、あくまで餅そのものが主役というスタイル。 長く愛されてきた理由がじわりと伝わってくる。日常と観光のあいだにあるような、門前町らしい立ち位置。そんな風景の一部として、今日も餅が円を描いている。ご馳走様でした。 — 住吉屋総本店044-266-4668神奈川県川崎市川崎区大師本町8-16https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140502/14009183/