2025.04.07 夜 戸越銀座の路地裏に息づく、すし匠の系譜@戸越銀座 鮨 ばんど 寿司 東急沿線 10000円〜29999円 ★★★★☆ 戸越銀座の住宅街、その静かな路地裏に『鮨 ばんど』はひっそりと佇む。店先には特段の主張もなく、まさに知る人ぞ知る一軒。だが、カウンターに立つ大将の胸元に刻まれた「匠」の文字に、この店がただ者ではないことがわかる。そう、ここは『すし匠』系列の一つ。名門の系譜を受け継ぎながら、店主・伊山徳宗氏が自らの個性を加えた寿司を提供している スタイルはもちろん、すし匠流。つまみと握りを交互に展開し、まるで波のように味わいのリズムを生み出す。序盤から一品ごとに丁寧な仕込みが施され、握りへと自然と導かれる流れが心地よい。 「平目」は、端正な包丁仕事で引き出された上品な旨味がじわり。 「海ぶどう」には酸味の効いたタレが添えられ、泡のように弾ける食感が楽しいアクセントに。 「つぶ貝」は、その弾力と香りの両方を楽しませてくれる。 「甘海老」のとろけるような甘さも見事。 ここでひときわ印象的だったのが「蛍烏賊と花山椒」の一皿。香り立つ花山椒が春の訪れを告げ、蛍烏賊の濃密な味わいがそこに重なる。なんとも季節を感じさせる一口。 「鰯」の握りは脂とシャリの酸味が心地よく、 「金目鯛の酒蒸し」は優しくも芯のある出汁の香りが鼻に抜けていく。 「帆立」は、精巣と卵巣を重ねるという珍しい仕立て。異なる部位の濃淡が一体化し、独特の食感と味わいが舌に残る。 「白子」はとろける食感に程よい炙り香がのり、 「初鰹」は藁焼きなどではなくクリアな味わいを楽しませる。 「トリガイ」は火入れによって開かれた貝の旨味が豊かで、とろけるような食感に頬が緩む。 「赤身」と「トロ」の対比は、マグロの魅力を語る上で欠かせない定番だが、その引き算的な味の組み立てにセンスが光る。 ちなみに、仲卸はやま幸だそうだ。 「蟹」は身の甘さと香りを逃さず、 「雲丹」は赤酢シャリとの組み合わせが絶妙。まるで液体のようなシルエットで余韻が長い。 「墨烏賊」はプリッとした食感が楽しく、 「のどぐろ」は脂の旨味を焼きの香りで引き締める。 後半に差し掛かっても勢いは衰えず、「鰤」の引き締まった身、 「穴子」のとろける煮詰めの甘さ。 「干瓢と玉子」で最後に味覚を整え、〆の余韻を美しく演出する。 そして、名物の「おはぎ」が登場するのはすし匠系ならではの粋な演出。系譜の一貫性を感じる。 赤酢のシャリはかためで、すっとほどける設計。全体を通じて、繊細な技とリズムのある構成で飽きさせない。すし匠の精神と、職人・伊山氏の確かな技術と遊び心が、すべての皿に丁寧に宿っていた。 ご馳走様でした。 — 戸越銀座 鮨 ばんど050-5872-4045東京都品川区西五反田6-22-11 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1317/A131712/13255116/