2025.03.22 夜 町に一軒、誠実な中華がある幸せ@中華料理 松月 中華料理 西武沿線 〜999円 ★★★★☆ 暖簾をくぐれば、そこには時間が止まったような町中華の原風景があった。 場所は、豊島区南長崎、名前は『中華料理 松月』。店構え、カウンター、厨房から響く中華鍋の音――どこを切り取っても懐かしいのに、どこか背筋の伸びる空気が漂う。厨房を守るのは、ご年配の夫婦。年季の入った手さばきには、無駄が一切ない。油を注ぎ、火を立て、鍋を振る音。それだけで、きっと旨いと確信できる。彼らの作る料理は、奇をてらうことなく、ただまっすぐに「うまい」に向かっている。 名物メニューは「上カレーチャーハン」。まず香りにノックアウトされる。中華鍋で豪快に炒められたカレーピラフは、ほんのり焦げた米粒にスパイスの香りが絡み、食欲を極限まで刺激してくる。炒飯というより、スパイス香るライス料理。ひと口、ふた口とレンゲが止まらない。体は正直なものだ。 そこに堂々と乗るのが、ジューシーな唐揚げが4つ。肉の旨みを衣が閉じ込め、噛むたびにじゅわっと溢れる肉汁。これがまたカレーピラフの余韻と絡み合い、無限ループに突入する。カレーと唐揚げ。この“わかりやすさ”が、まるでエンタメのような多幸感を生む。 しかもこれで、お値段はたったの「650円」。都心のワンコインランチですら見かけなくなった今、この満足度でこの価格は、まさに町中華の奇跡。価格破壊ではなく、これがこの店にとって“当たり前”なのだとしたら、それだけで胸が熱くなる。 町中華の魅力とは、非日常ではなく“日常を高めること”。『松月』の料理は、まさにその言葉を体現している。懐かしく、あたたかく、どこか芯のある美しさがある。そして何より、しみじみとうまい。豪華絢爛な中華ではなく、静かに、確かに、記憶に残る中華料理だ。町の空気に溶け込みながら、そこに在るべきものが在るという安心感。中華鍋の音が、今日もどこかで響いている。ご馳走様でした。 — 中華料理 松月03-3951-9505東京都豊島区南長崎4-39-1https://tabelog.com/tokyo/A1321/A132101/13022794/