2025.03.21 昼 あの麺に、もう一度会いたくなる。@日陰 ラーメン・つけめん 川崎市 1000円〜2999円 ★★★★★ 2021年、新川崎の静かな住宅街にひっそりと暖簾を掲げた『日陰』。 一見すると目立たぬ立地、飾り気のない店構え。それでも開店と同時に人が集まり、いつしか行列が日常に。店名には、控えめで謙虚な響きがあるが、その丼の中から溢れる熱気と高揚感は、まさに“日向”そのもの。ひと口でファンを生むだけの力を持った一杯が、ここにはあります。 最大の感動は、何と言っても「麺」にある。まるで、つきたての餅のような弾力と粘り。もっちりとした食感の中に、ほどよいコシと滑らかさが同居しており、一口すするたびに口の中が幸福感で満たされる。麺が美味しすぎて、気がつけばスープの味を確認するのを忘れていた──それほど麺に意識を集中させる力がある。 しかし、逆に言えば、それだけスープが麺に寄り添っているということ。鶏をベースに、煮干しや節の旨味を重ねたスープは、塩味こそしっかりしているが、決して角の立たない、まろやかで包容力ある味わい。主張しすぎず、ただ黙って麺を支える。これこそ名脇役であり、理想の関係性だ。 「ワンタン」は、麺の延長線上にあるような一体感。皮がふるふるとたゆたうように口に広がり、具材のジューシーさと共に麺の食感に優しい余韻を添える。「チャーシュー」は、肉の旨みがしっかりと染みた柔らかい仕立てで、噛みしめるたびに溢れるコクを、麺がしっかりと受け止めてくれる。 そしてもうひとつの名物が「生姜丼」。たっぷりのそぼろはひたひたに出汁を吸い、生姜の香りがふわりと立ち上がる。その清涼感と力強い旨味が、ラーメンを食べた直後でも、スッと胃袋に滑り込んでいく。このボリュームで150円というのも驚異的だが、単なるサイドメニューにとどまらない存在感。あまりの満足感に、麺大盛りを我慢してまで頼む価値があると思わせる。 食べ終わったあとに残るのは、派手な驚きではなく、静かな充足感だった。あの麺のもっちりとした感触、スープの包容力、生姜丼の後味に残る清涼感。ひとつひとつが穏やかに響き合い、食べる側の心にそっと寄り添ってくる。ああ、うまかったな。そう思わせる一杯だった。ご馳走様です。 — 日陰神奈川県川崎市幸区南加瀬4-16-2https://tabelog.com/kanagawa/A1405/A140503/14081996/