「五目」って、結局何なんだっけ?
五目ちらし、五目あんかけ、五目そば——日本の食文化に深く根付いたこの言葉。でも、「五つの具材を使っているから五目」というわけではない。「五目」とは、「いろいろな食材を使った」という意味で使われることが多いそうだ。つまり、数の概念ではなく、多彩さを象徴する言葉。しかし、竹ノ塚の名店『栄楽』の「五目チャーハン」は、まるで“数字”の意味でも「五目」を体現しているように見える。皿の上に整然と並べられたトッピング。その秩序が、料理としての美しさを生んでいる。

それでは、この見事な彩りをひも解いていこう。
黒——煮椎茸。
深い色合い、しっとりとした質感。甘辛く煮含められた味わいは、チャーハン全体にコクをもたらす“低音”のような存在だ。一口噛めばジュワリと広がる旨味が、全体の厚みを支える。
黄——卵。
ふんわりと火入れされた卵は、炒飯に軽やかさを与える。この鮮やかな黄色が、皿全体を明るく照らす。まるで、一皿に宿る“光”のような存在。
茶——チャーシュー。
粗めに刻まれたチャーシューは、香ばしさと肉の旨味を持つ主役級の存在。カリッと焼き付けられた表面の香ばしさ、脂がもたらす甘さ。その両面が炒飯に力強いリズムを刻む。
緑——グリンピース。
中央にちょこんと鎮座する、鮮やかなグリーン。その瑞々しさとプチっと弾ける食感は、まるでハーモニーの中のアクセント音。控えめながらも、なくてはならないバランサーだ。
紅白——なると。
ピンクと白の渦巻き模様が、どこか懐かしさを感じさせる。細かく刻まれたそれは、炒飯の中に散りばめられ、ビジュアルの華やかさだけでなく、食べたときの安心感をもたらす。
そして、白——蟹身。
ふんわりとした蟹身が、そっと積み上げられている。主張しすぎない甘さが、炒飯全体を上品にまとめ上げる。香り、食感、余韻のすべてが繊細。味に奥行きを加えながらも、全体の調和を乱さない。

さて、肝心の炒飯はどうか。胡椒がバッチリ効いたパンチのある味わいに、ややしっとりとした食感。米粒のひとつひとつが油をまといながらもベタつかず、口に運べば香ばしさとともに旨味がじんわりと広がる。そこに件のトッピングが加わることで、それぞれの個性が際立ち、炒飯は多層的な魅力を見せていく。どの具材も単独で食べても十分に旨い。しかし、混ざり合うことで新たな表情を生む。これこそが、五目の本質なのだろう。
しかし、このレビューを書いていて、ふと気づいてしまった。もしかしたら、皆さんも気づいたかもしれない。これ、五目じゃなくて六目だったな。笑 でも、五目とはいろいろな食材を使ったという意味であって、厳密に五種類である必要はないのだ。ならば、この一皿が美しき五目チャーハンであることに何も変わりはない。そう、五目とは“概念”なのだから。笑 ご馳走様でした。
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栄楽
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