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2025.02.22 夜

新世代の日本料理、その一皿に詰まる挑戦@日本料理 研野

日本料理

京都市

10000円〜29999円

★★★★☆

京都、日本料理の最激戦区に誕生した『日本料理 研野』。2021年オープンの若き店主が挑むのは、日本料理の枠組みを守りながら、そこに遊び心を散りばめること。その出自は『菊乃井』。王道を学んだシェフが、独自の解釈で生み出す料理の数々。ここには伝統と挑戦が交差する瞬間がある。

料理の随所に見え隠れするのは、シェフのルーツ。出身地・青森の食材や郷土料理が、京都の空気の中で再構築される。「けの汁」もそのひとつ。青森の郷土料理で、米が貴重だった時代に、野菜を刻んで米に見立てたもの。本来は味噌仕立てが一般的だが、ここでは澄まし仕立て。出汁の香りが澄み渡り、野菜の甘みが際立つ。郷土料理を大切にしつつ、日本料理の技法で新たな魅力を引き出すアプローチが光る。

そして、もうひとつの特徴は遊び心。伝統を踏襲しながらも、どこか意外性のある組み合わせや演出で、日本料理の枠に新たな風を吹き込む。その象徴ともいえるのが、京都亀岡のもち豚肩ロースの「焼豚」。

スペシャリテとして供されるこの一品は、焼豚という中華の技法を取り入れながら、七輪で炙ることで和のニュアンスをプラス。香ばしく焼き上げられた豚肉は、噛めば旨味がじんわりと広がる。甘辛い味付けがクセになり、付け合わせの真菰茸にも和のエッセンスを施す。

その他の料理も順を追ってご紹介。

「お造り」は、今朝獲れの明石の鯛。ぶりっと弾力がありながら、口の中でほろりと溶ける柔らかさ。そして驚くのは、その香り。「海老みたいな香りがする」との説明通り、まるで鯛自身が食べた餌の記憶をまとっているかのような芳醇な香りが鼻を抜ける。皮目を炙った鰆には、玉ねぎ醤油を合わせることで、甘みと香ばしさを引き立てる。

「八寸」は、季節の恵みが詰まったひと皿。若狭の焼き牡蠣、苺の白和え、ほうれん草と芹のお浸しの梅肉和え、蛍烏賊の天麩羅、初午にちなんだ稲荷寿司、淡路の針烏賊と雲丹。伝統の流れに沿いながらも、随所に独自のアイデアが見え隠れする。

「独活と蓮根の春巻き」は、中華の青椒肉絲のような風味を持ちながら、和の素材が主役。餡にはチーズと胡椒のアクセント、そして片方には蕗の薹が忍ばせてある。春の苦味が、後味をぐっと引き締める。

食事はまず「豆ご飯」。香ばしさと旨みたっぷりの鰯の塩焼きや香の物が食欲を刺激する。

ここで終わるかと思いきや、そこから怒涛のご飯ラッシュ。「焼豚丼」

「鰆の納豆醤油和え」

「へしこ茶漬け」

「素ラーメン(鯛のアラ出汁)」と続く。気づけばほとんどがコース内の素材を再利用。サステナブルなアプローチでもあり、何よりこの贅沢な満足感。

甘味は「ホワイトチョコと焼き葛餅」「あまおうのソルベ」。シンプルながら、しっかりと締める。

ここには、確かな技術と遊び心が共存する。料理はもちろん、例えば、音楽も一つの要素として場を彩る。客の好みに合わせて演歌からアメリカンポップスまで流れるというのもユニークだが、これも料理とブリッジさせていく。味覚や視覚だけでなく、聴覚でも料理を楽しませるのだ。肩肘張らずに楽しめる、そんな新世代の日本料理。京都にまた一つ、個性を放つ店が生まれた。ご馳走様でした。

日本料理 研野
050-3647-2912
京都府京都市左京区岡崎徳成町28-22
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260302/26035592/

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