2025.02.21 夜 肩肘張らずに楽しめる、若き才能のビストロ@繁邦 フレンチ 渋谷・恵比寿・代官山 10000円〜29999円 ★★★★☆ 2024年2月、恵比寿に誕生したビストロ『繁邦』。 最近増えてきた、若手シェフによるビストロ。その多くは、同世代の若者に刺さるだけでなく、肩肘張らないセンスの良さで女子会やカジュアルな会食の場としても機能する。『繁邦』もまたその一軒だ。等身大の雰囲気とメニュー。それでいて、料理の端々にはシェフの光る感性が垣間見える。肩肘張らずに楽しめるが、ありふれたビストロではない。その絶妙なバランス感が、この店の魅力だろう。 店名は、ご祖父母様の名前から一字ずつ取ったものだという。世代を超えて受け継がれる思いは、料理にも表れている。シェフは『しげくに屋55ベーカリー』の息子さん。パン屋に生まれながらも、選んだのはビストロの道。だが、パンの技術は確かにここに生かされている。それがスペシャリテの「繁邦トースト」。カリッと焼かれたトーストに、蜂蜜、ペコリーノチーズ、そして胡桃。シンプルな構成ながら、甘み、塩味、香ばしさが複雑に絡み合う。ワインとの相性も抜群で、食事の幕開けを飾るのにふさわしい一品だ。 「白子と熟成芋のグラタン」は、濃厚でありながら甘やかさも感じる仕上がり。グツグツと焼き上げられた表面の焦げ目が食欲をそそる。スプーンを入れると、滑らかな白子と熟成芋が溶け合い、まるでデザートのような甘さが広がる。そこに、ほのかに爽やかな香りが加わるのが面白い。グラタンという定番の枠に収まりながら、しっかりと個性が宿っている。 パスタは2種類。「ハマグリのボンゴレビアンコ」は、貝の旨味を余すことなく生かした王道の仕上がり。パスタはアルデンテ、スープの塩気がワインを誘う。 そして「イカスミとカラスミのパスタ」。イカスミのコクにカラスミの塩気が重なり、シンプルながらも力強い味わいに仕上がっている。馴染み深いパスタの中にも、シェフのセンスが光る。 デザートは「ミルクジェラート」。余計なものを削ぎ落とし、シンプルに素材の旨味を際立たせる。ミルクの濃厚なコクがありながら、口溶けは軽やか。締めくくりにふさわしい一皿だ。 ビストロと聞けば、フレンチの枠組みを想像しがちだが、『繁邦』はそのイメージにとらわれない。アラカルトの自由さ、馴染み深いグラタンやオムレツ、しっかりと食べ応えのあるパスタ。そして、肩肘張らない空間。気取ったコース料理ではなく、心から食べたいと思う料理がここにある。そんなビストロが、また一つ生まれた。ご馳走様でした。 — 繁邦03-6451-2422東京都渋谷区恵比寿南1-14-15 ラ・レンヌ恵比寿 3Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1303/A130302/13294106/