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2025.02.16 夜

シェフの愛情と探究心が生む、食材が輝くコース料理@MEI

イタリアン・ピザ

名古屋市

10000円〜29999円

★★★★☆

名古屋にある一軒のレストラン。店の名は『MEI』。シンプルな響きだが、そこには深い愛情が込められているという。屋号の由来は、店主が飼っていた猫の名前。料理とは作り手の個性を映す鏡であり、その根底にあるのが愛情だとするならば、『MEI』はそれを体現する店なのかもしれない。この店の特徴は、シェフのフィールドワークにある。山へ入り、木の子を自ら採り、猟に出て鴨を仕留める。食材に愛情を傾け、直接向き合うことで、料理の方向性が決まる。だからこそ、一皿ごとの完成度が高いだけでなく、それらがひとつの物語としてコースの中に組み込まれている。

今回のクライマックスはまさにシェフがハンティングしたという真鴨。

狩猟とは、命をいただくという行為そのもの。その重みを知る者だからこそ、食材と真剣に向き合う。この真鴨は、シェフ自らの手で仕留められ、適切な処理を施されたもの。狩りの瞬間からすでに、この一皿は始まっている。ナイフを入れると、しっとりとした肉質が刃を優しく受け入れる。そして、噛み締めた瞬間、驚くほどジューシーな旨味が溢れ出す。鴨本来のピュアな味わいを最大限に引き出した仕立て。

その隣には、木下牧場のシンシン。肉の柔らかさ、赤身の濃厚な旨味。二つの肉が、皿の上で響き合うのが面白い。付け合わせも抜かりない。備中蓮根のシャキッとした歯触り、去年の秋に収穫し乾燥させた香茸の芳醇な香り。噛むごとに、肉の旨味と香りが折り重なり、余韻となって長く残る。

その他の料理のラインナップはこちら。

「天然トラフグ わかめ」
伊勢湾で獲れた天然のトラフグを主役に、日間賀島のわかめを添えた一品だ。フグといえば淡白な味わいを思い浮かべるが、誰がそんなことを言ったのだろう。フグの骨からとった出汁が旨味を補い、さらに身の食感を巧みに活かすことで、フグという食材のポテンシャルを最大限に引き出している。旨味をたっぷり吸ったわかめもまた、フグの恩恵を受けたもう一つの主役だ。

「原木椎茸 あん肝」
たまり醤油と卵黄を合わせたソースが決め手。原木椎茸は炭火で焼かれ、まるでステーキのような力強い香りと食感を持つ。そこにあん肝の濃厚なコクが絡み合い、一口ごとに余韻が広がっていく。

「活け〆あんこう 頂チーズ」
水分をたっぷり含んだあんこうの身を活かした一皿。焼き上げることで旨味を凝縮し、柿スライスと柿酢のマリネを添えることで、甘みと酸味のバランスを整えている。仕上げには、北海道ニセコ産の2年熟成チーズ。その熟成香が、まるであんこう自体の熟成香のように感じられるのが面白い。

「ツキノワグマ 真牡蠣」
岐阜で獲れた小熊のミスジを炭火で焼き上げたもの。ピュアな脂の甘味が際立ち、ジビエ特有のクセはほとんど感じられない。そこに合わせるのは梶島の真牡蠣。余韻が長く、強い旨味を持つ牡蠣に、自家製のオイスターソースが絡む。これほど異なる食材が、ここまで自然に一つの皿に収まるとは。

「渡り蟹 法蓮草」
メスの渡り蟹の濃厚な旨味を牡蠣酢が引き締め、手打ちのパスタがそれをしっかりと受け止める。卵黄を使わず、しっかりとコシのある食感に仕上げた生地は、蟹の濃密なソースをしっかりとまとい、一口ごとに旨味が広がる。

「墨烏賊のイカ墨 柚子」
ねっとりと濃厚な墨烏賊を主役に、スペインの唐辛子パウダーをアクセントとして加え、味のキレを生み出している。イカ墨のまったりとした旨味にスパイスの刺激が加わることで、最後まで飽きることなく楽しめる仕立てだ。

「安納芋のモンテビアンコ」
ラムやグラッパが香り、ねっとりと濃厚な甘さに、スパイスのニュアンスが奥行きを加える。栗を使うことが多いモンテビアンコだが、安納芋ならではの自然な甘みが主役。舌の上で溶けるような食感と芳醇な香りが、食後の満足感を一層高める。

「ティラミス」
クラシックな要素を守りながらも、『MEI』らしいエッセンスが加えられている。特徴的なのは、その軽やかさ。食後でも負担にならず、むしろもう一口、もう一口と食べ進めたくなるような仕立てになっている。このバランス感覚が、この店の料理全体の構成力を物語っている。

『MEI』は、単なるレストランではない。狩猟や採取を含めた“食”のフィールドワークを、皿の上に昇華させる場所だ。自然と対話し、食材の声を聞き、それを料理に落とし込む。その結果、どの皿も、素材が生きた一皿に仕上がっている。そして、その根底にあるのは、やはり食材への愛情だ。命をいただくからこそ、大切に扱い、最高の形で供する。その姿勢が、『MEI』の料理を唯一無二のものにしているのだろう。ご馳走様でした。

MEI
050-5890-3892
愛知県名古屋市西区那古野1-23-2 四間道糸重3
https://tabelog.com/aichi/A2301/A230101/23077616/

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