肉好きなら一度は訪れるべき店、それが『おにく花柳』。

人形町時代から名を馳せた肉割烹の名店が、新天地でさらに進化を遂げている。ここでは、肉を単なる豪華な食材として扱うのではなく、いかに最高の状態で味わってもらうかに徹底的にこだわる。そのために選ばれるのは、最高級の神戸牛。そして、その旨さを最大限に引き出すための、計算し尽くされた技法。そのこだわりが詰まった一皿一皿を追ってみよう。

まず登場したのは「たんと蕗の薹豆腐」の白味噌仕立て。ただの、タンと豆腐の共演と思うなかれ。スプーンを入れた瞬間、タンがほぐれるどころか、豆腐よりも柔らかいことに驚く。白味噌の優しい甘み、蕗の薹のほろ苦さがアクセントになり、口の中でとろけるタンの脂と一体化する。肉の概念が一瞬で変わる一皿だ。

そして「握り鮨」。シャリの上には、刺身のように美しい肉。噛むと、驚くほどしっとりした舌触り柔らかさに、肉なのか、魚なのかとジワッと脳がバグっていく。しかも、この赤酢の効いたシャリと肉の一体感は、完全に寿司の文脈。魚を凌駕するレベルで仕上げられた肉の仕事に、思わず唸る。

人形町時代の名作も健在。「カツサンド」

「シチュー」など、当時の人気メニューはアップデートを重ね、より完成度を高めている。

定番であった刺身も「“但馬玄”生姜醤油」として登場。肉の甘みを生姜醤油がキリッと引き締める。余計なソースや濃い味付けを施すのではなく、肉そのものの旨味を最大限に生かすスタイルがここに貫かれている。

肉料理の真骨頂とも言えるのが、「シャトーブリアン」。ここでも肉そのものの味を前面に押し出しつつ、野菜が巧みにバランスを取る。早堀り筍と万願寺唐辛子に施した塩気やアクセントを野菜側に持たせることで、肉の旨さが際立つ構成。余計な装飾はなし。ただただ、肉と向き合う。

そして2種類の「しゃぶしゃぶ」のアプローチ。一つ目は、新わかめと胡麻ポン酢、浅葱、黒七味の組み合わせ。肉の脂と海藻の風味が絶妙に溶け合い、ポン酢の酸味が全体を引き締める。

二つ目は、三関せりと生卵。香り高いせりのシャキシャキ感、濃厚な卵のコク。しゃぶしゃぶの概念を変えてくる。

締めには、「テールと蕗のご飯」。肉の旨味を吸ったご飯は濃厚で、それでいてクドさはない。しみじみとした味わいで、肉尽くしのコースのフィナーレにふさわしい。

そして、もう一つの締めとも言える「カレー」。これも人形町時代からの定番で、肉の旨味が凝縮した濃厚な仕上がり。

デザートには、「和三盆あいす 苺」。甘さ控えめの上品な和三盆の風味に、苺の酸味が心地よい余韻を残す。最後まで計算されたコースだ。

この店を支えるのは、シェフの圧倒的な技術と感性、そして、肉を知り尽くしたプロフェッショナルな視点。ソムリエ資格も持ち、ワインとのペアリングも完璧。ウォークインのセラーが見える店内は、まさに肉を楽しむための舞台にふさわしい。『おにく花柳』は、単に高級な肉を食べる店ではない。肉を極め、肉の可能性を探求し続ける場所だ。人形町時代からの歴史と、そこからの進化。その両方が詰まったこの一軒、肉好きなら絶対に見逃せません。
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おにく 花柳
03-6264-4129
東京都中央区銀座1-14-6 VORT銀座 briller 7F
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130101/13278579/