2025.02.03 夜 進化する、薪和食。@ 鈴田式 日本料理 六本木・麻布・広尾 50000円〜 ★★★★☆ 薪の炎が生み出す、和の新境地。 西麻布へと移転した『鈴田式』。空間が広がっただけではない。新たに炉窯を増設し、火の扱いにさらなる精度を求める環境が整った。薪の炎を自在に操るためのステージが、ここに完成したのだ。和食の世界で研鑽を積み、フレンチの技法も取り入れる田代秀人氏。その手がける料理は、和食の伝統に則りながらも、どこか大胆で革新的。すべては薪という熱源を中心に構築されており、炭火のように安定した熱ではなく、激しく燃え上がる炎の中に食材を投じることで、薪特有の香りと旨みを瞬時に閉じ込める。それが『鈴田式が提唱する「薪和食」である。 移転後の進化とは何か。 まず、炎の管理に余裕が生まれたことで、食材ごとのアプローチの解像度が上がったように思う。味付けのディテールにも変化がある。例えば、名物「椎茸の薪焼き」。これまではシンプルな薪焼きだったが、発酵させた椎茸のペーストを詰め、仕上げに古代乳製品「蘇」を削るという手法を取り入れた。結果、椎茸そのものの持つ旨味に、発酵のコクと奥行きが加わる。 そして、肉の火入れ。スペシャリテである「黒毛和牛ヒレ肉の薪焼き」は、銘柄にはこだわらず、サシの少ないA4の雌牛をセレクト。強火の直火で芯温を上げた後、近火で焼き色をつけ、さらに遠火の強火で高さを変えながら焼き上げる。ここに、新たなアプローチとして加わったのが、「発酵玉葱醬」。これまでの土佐醤油に加え、玉葱と醤油を発酵させたコク深いソースが、赤身の持つ旨みをさらに引き出しております。 その他、食べた料理のラインナップ。 「大根」雉の出汁で。ほのかな甘みと、蕗味噌のほろ苦さがアクセント。 「ズワイガニの薪焼き」足を薪で燻し、韮醤油で。薪の香りが甘さを際立たせる。 「虎河豚」白子の裏漉しと、出汁のジュレの組み合わせ。繊細な甘みが際立つ。 「帆立」揚げ物。甜醤油で。月光百合根 「カイノミの手巻き」これも薪の香りたっぷり。 「月輪熊の鍋仕立て」九条ネギとジャンボなめこを合わせた仕立て。 〆は5つ。もちろん全部。 「蟹ご飯」薪の香りが強烈! 「蟹味噌おじや」 「塩蕎麦」ナッツ香を伴った蕎麦。 「鮪漬け丼」脂たっぷり! 「鴨そぼろTKG」 そして、薪和食の世界観はデザートにまで及ぶ。「ミルクアイス」は薪の香りがたっぷりで、本来スモーキーさを増すはずの味変のウイスキーが、むしろスモーク感が減退するという逆転現象が起こります。笑 もう1つのスイーツは、「台湾カステラ」で、トリュフの蜜付き。火を制し、和食を新たなステージへと昇華させる。それが鈴田式の今。進化し続ける薪和食、その行く先を見届けたくなる一軒である。 ご馳走様でした。 — 鈴田式東京都港区西麻布1-9-5 2Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1307/A130701/13293100/