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2025.02.01 夜

頑固者の執念。テロワールを感じさせる天麩羅完成。@天ぷら もっこす

天ぷら

前橋・高崎

10000円〜29999円

★★★★☆

頑固者。

店名の『天ぷら もっこす』は、熊本の言葉で頑固者という意味を持つ。店主の山口浩大将はまさにその言葉の通りの男。熊本に生まれ、東京の名店「つな八」で修業を積み、高崎の地で己の天ぷら道を極める。妥協なき素材選び、繊細な温度管理、火と油を知り尽くした技。彼こそが信念を貫き、己の道を突き進む頑固者なのだ。

天ぷらは、素材と油の対話。衣をまとわせ、高温の油に沈め、瞬間的に仕上げる。だが、ただ揚げればいいわけではない。どこまで火を入れるのか、どこで止めるのか、その一瞬の判断がすべてを決める。その卓越した判断力が、食材に含まれる水分や衣の厚みに変化をもたらし、最適なアウトプットを実現させているのです。揚げ油は「大白胡麻油」。香りがいい。それだけで、すでに天ぷらの完成度が上がる。

彼の料理を語るのにテロワールの視点は外せない。軽やかながらも、しっかりとした存在感を持つ衣を作り上げるのは群馬県産。そして水。料理に使うのは、大将自ら山に足を運び、納得した水だけを使う。水が天ぷらの仕上がりを左右することを知るからこそ、手間を惜しまない。魚介は高崎の仲卸から、野菜は、地元の農家に直接足を運び仕入れる。その情熱とこだわりが、この季節のスペシャリテほうれん草の根を誕生させております。

それでは、料理のラインナップをご覧にいれましょう。

「鱈白子」天ぷらではないが、序章としての存在感は抜群。とろりとした舌触り、噛めばじゅわっと広がる濃厚な旨み。お凌ぎのような役割を果たしながら天ぷらへの期待を高める。

「椎茸」なんと興味深い揚げ方か。天かすで土手を作り、そこに油を滞留させる。結果、まるでアヒージョのような香ばしさを生み出す。サクサクで軽やか、そして内側はジューシー。その対比が心地よい。

「海老」一本目は丸まった姿のまま、レアな火入れ。ぷりっとした食感の奥に、ねっとりとした甘みが潜む。

「海老」二本目は、対極的にしっかりとした火入れ、甲殻類特有の香ばしさを引き出す。噛むたびに、香りと旨みが増していく。

「海老頭」味噌の濃厚さが炸裂。

「ブロッコリー」サクサクの衣、香ばしさの計算。シンプルなようでいて、緻密な仕事が光る。

「蓮根」皮付きのまま、ぶっとく揚げる。シャキッとした食感、噛みしめるほどに増す甘み。天ぷらの醍醐味がここにある。

「甘鯛」萩からの一本。ぱりっと、そしてふわっと。皮の香ばしさと身の繊細な旨みが共存する。クリアな旨みが印象的。

「蕗の薹」新潟からの天然物。醤油塩をたっぷりと。噛めば風味が爆発する。苦味と香り、塩気が一体となる瞬間。

「下仁田ねぎ」とろける甘さ。そこに走る酸味のアクセント。発酵醤油の香りがぶわっと広がり、深みを生む。

「ほうれん草の根」ほうれん草なのに、芋っぽさ、とうもろこしっぽさを感じる。ひと噛みごとに、新しい発見がある。

「里芋」蒸した後に、マッシュにし、揚げ出しのような仕上がりに。とろける。その一言がすべてを物語る。

「虎河豚白子」予想はしてましたが、完全にとろける系。それ以上の説明はいりませんね。

「刺身」本アラ

「刺身」赤ムツ

「馬刺のユッケ丼」大将の地元である馬肉の登場。九州の醤油とともに。

「大根のツマと茗荷」口直し的な位置付け。天ぷらの余韻を整え、次への架け橋となる。

「雲丹」セリの一番。雲丹の細巻きの天ぷらの上にたっぷりと雲丹。口の中で、磯の香りが爆発する。

「北寄貝の天ぷら」発酵白菜とともに。ご飯と合わせ、胡椒、チーズ、黒トリュフ。リゾット風に仕立てられた、異色の一皿。

「蕪」あやめ雪かぶ。ゆっくり火を入れ、香ばしさと甘さを引き出す。冷めてこそ、全身で味わえる仕上がり。猫舌の味方。

「穴子」対馬から。カンボジアの自家製ポン酢で漬けた生胡椒と。

「穴子の中骨」サクサクの香ばしさ。食感の妙が楽しい。

「シルクスイート」デザートとしての一皿。四時間蒸し、二日寝かせる。その時間が生むのは、ねっとりとした甘み。シンプルだからこそ、素材の持つ力を感じる。

「天むす」穴子と野菜のかき揚げ。サクサクの衣に、野菜の甘みと旨みが凝縮される。

「小天丼」アラと野菜の天ぷらをご飯とともに。タレが染み込み、最後の一口まで天ぷらの魅力を堪能させる。

「甘味」ヨーグルトとクリームチーズ。さっぱりとした後味が、最後の余韻を締めくくる。

天ぷらはただの技ではなく、土地の味を映す鏡でもある。大将・山口浩の「もっこす」な精神は、熊本で生まれ、東京で磨かれ、群馬の水と小麦、旬の食材を通して形を成す。揚げるのは、素材の声を聞き、その持ち味を最大限に引き出すための執念。火入れひとつ、油の管理ひとつに妥協を許さぬその姿は、まさに頑固者そのもの。職人の信念と土地の恵みが交差する瞬間を噛みしめながら、また一口、天ぷらを味わう。ご馳走様でした。

天ぷら もっこす
050-5872-9051
群馬県高崎市中大類町426-7
https://tabelog.com/gunma/A1001/A100102/10000668/

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