どこにでもあるものでピッツァを作りたい。この言葉に、『400℃ PIZZA TOKYO』の哲学が詰まっている。

ナポリの伝統とは異なる独自のピッツァ作りに挑戦している店。その個性が最も表れているのが、熱源へのアプローチだ。ナポリピッツァの王道といえば、薪窯で500℃以上の高温で一気に焼き上げるスタイル。しかし、この店の名前にもなっている400℃は、ピッツァの世界では低温にあたる。岡山の本店「400℃ PIZZA」では薪、「400℃ mori no machi」では電気、そして東京の「400℃ PIZZA TOKYO」ではガスを使用。しかも、ガスでは400℃まで温度が上がらず、さらに低温の焼成となる。

さらに驚くべきは、ピッツァの焼き方。厨房の中心に鎮座するのは、まさかのベルトコンベア式オーブン。職人がピザ窯の前で一枚ずつ焼き上げる伝統的なスタイルではなく、ピッツァが自動的に焼き上がっていくという、まるで工場のような光景だ。このアプローチでの成功は、飲食の属人的な仕組みからの脱却と400℃が全国を席巻する未来を予感させます。

そして、どこにでもあるもので作るという発想は、熱源だけにとどまらない。食材選びにもその哲学が貫かれている。地元岡山の食材を活かしたピッツァが登場したかと思えば、フェイクである“かにかま”を使った一枚など、ユニークなアプローチが随所に光る。伝統偏重にも、高級志向にも陥ることなく、独自のピッツァを完成させているのが興味深い。
さて、その「低温ピッツァ」の仕上がりはどうか?
見た目には厚みがあるが、驚くほどエアリー。噛み締めるとふんわりとした軽さがあり、咀嚼の後にはもっちり感も顔を出す。体は正直なもので、結果、ピッツァを6枚も食べてしまったが、全く胃にダメージがない。もちろんシェアしてますが。笑
「ネーヴェ」岡山のマッシュルームとチーズの組み合わせ。ふわふわとした食感が印象的。

「DOC」水牛モッツァレラを使用したマルゲリータ。トマトの酸味とチーズのコクがシンプルながらも際立つ王道の美味しさ。

「カニカマーナ」かにかまを使ったピッツァ。フェイクを本気で美味しく仕上げる、その発想が面白い。仕上げのからすみが絶妙なアクセントに。

「FNT」オリジナルブルーチーズ、マスカルポーネ、はちみつの組み合わせ。甘さと塩気のバランスが秀逸で、クセになる味わい。

「イカピース」コウイカとえんどう豆を使ったピッツァ。南イタリアではポピュラーな組み合わせらしいが、日本ではなかなか見かけない一枚。

「ローザ」モルタデッラ、ルッコラを合わせたピッツァ。オリーブオイルではなく明太子マヨネーズで仕上げるところにも、コンセプトとの一致を感じます。

ちなみに、オーナーシェフはもともとイタリアンの料理人で、ピッツァは独学。そのため、ピッツァ作りに縛られることなく、自由な発想が生まれるのだろう。ついでに、前菜もしっかり美味しいのも魅力です。
「シャルキュトリー盛り合わせ」

「テリーヌ盛り合わせ」

「コンビーフ風の肉料理」

「イチゴとブッラータのカプレーゼ」

熱源も、食材も、発想も。どこにでもあるものでピッツァを作る、それを突き詰めた結果が、この『400℃ PIZZA TOKYO』。神楽坂の地で、新たなピッツァの形をぜひ体験してほしい。ご馳走様でした。
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400℃ PIZZA TOKYO
東京都新宿区若宮町13-1 kif annex 1F
https://tabelog.com/tokyo/A1309/A130905/13294495/