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2025.01.13 夜

食材に魔法をかける料理人@ル ソルシエ

フレンチ

山口

10000円〜29999円

★★★★☆

子供の頃、料理人は魔法使いだと思っていた。

鍋やフライパンから立ち上る湯気は煙の魔法陣、包丁が奏でる音は呪文のようだった。ありふれた野菜や肉が、彼らの手によって香りも形も全く異なる「何か」に変わる瞬間。子供ながらに、それは魔法以外の何ものでもないと思った。そして今、大人になった私の前に、その魔法を現代に体現する場所が現れた。

山口県周南市のフレンチレストラン『ル ソルシエ』(Le Sorcier)。

その名も「魔法使い」を意味するこのレストラン。外観は看板もなく、古い建物の中はカーテンで隠されているのみ。まさに魔法使いの隠れ家に相応しい佇まいで、訪れる者の期待感を高めます。店内はグレーを基調としたシックな空間で、無駄を排除し、陰影を大切にしたシンプルなデザインが特徴。その空間は非日常的でありながらも、どこか落ち着きを感じさせる雰囲気を漂わせています。

目の前に現れる料理はどれも驚きの連続で、素材本来の味わいを超越し、新たな体験を提供してくれる。シェフは素材への深いリスペクトと研ぎ澄まされた技術を持ち合わせ、地元山口県の食材を中心に独創的な一皿へと昇華させる。ちなみに、メニューで魔法のレシピは細かく公開される。1日1組だからこそできる、料理の工数が伝わってまいります。そろそろ、コースの内容を紐解いていきましょう。

「金のキャビアのタルトレット」
金箔を贅沢にあしらったタルトに、山口の卵を使ったというタルト。ハーブを添えて。芳醇な味わいでありながら、キャビアに頼らないバランスが見事です。

「ROUGIE社フォアグラ/あんぽ柿/バイヨンヌ産生ハム、ビーツのチップとラベンダーパウダー」
柿を生ハムで包み、中にはフォアグラのテリーヌ。上にはピスタチオ、サワークリーム、島のレモンが添えられています。柿の酸味とフォアグラが絶妙に調和します。お隣はビーツのチップとラベンダーパウダーで華やかさなアミューズに仕上げます。

「瀬戸内の足赤海老と萩千石台大根のヴァニラ風味 牛窓のシャンピニョンとパルメザンの雪」
足赤海老のマリネにバニラの香りを纏わせ、甲殻類のソースと合わせています。大根の甘味とシャンピニョン、パルメザンの風味が一体となった一品です。まるで雪が降り積もったようなビジュアルも素敵。

「仙崎産赤イカで包んだ瀬戸内の天鯛とズワイ蟹のクリーム 宇部産菜花とカリフローレのピクルスを添えて 瀬戸内の七草のグリーンソースと美祢産のブール・ブラン」
赤イカのマリネで包まれた天鯛と噴火湾のズワイ蟹のクリーム。蕪の美味しさが際立ち、グリーンソースとブール・ブランが全体をまとめています。

「ブリアサヴァランのブランマンジェ 貴腐ワインと赤い果実のジュレ/周南市の2種類の葡萄」
フルーツとチーズの組み合わせが新鮮で、シャインマスカットとマイハートの2種類の葡萄が爽やかな甘味を添えています。ちなみに、シェフのお婆様は葡萄農家だったんだとか。

「山口県産熟成と美東牛琴のヴルーテ/セップ茸のコンソメ 長州黒柏とランド産ピジョンのパテ/山口と仏産キノコの香り」
ソーセージやラビオリ、トランペット茸など、多彩なキノコの風味が楽しめる一皿です。

「長和牛ホホ肉とやまぐち和牛”燦”/ソース・ペリグー 萩産ノーザンルビーと百合根/仏産黒トリュフの香り」
2種類の和牛を使用し、異なったバリエーションで楽しませてくれます。ソースはフレンチの命とも言えるものですが、そのニュアンスは流石の一言。

「ガレット・デ・ロワ/かおりの苺のコンフィ/苺のマリネ」
伝統的なフランス菓子に苺の甘酸っぱさが加わり、上品なデザートに仕上がっています。

「仏産杏/伊産マロン/周防大島檸檬のショコラ・ブラン ムラング・シャンティのイメージで」
杏とマロン、檸檬の風味がホワイトチョコレートと調和し、軽やかな甘味が広がります。

魔法の正体は、シェフの想いと技術、そして発想の豊かさにありました。創造的なアイデアが素材に新しい命を吹き込み、食べるたびに驚きと感動を与えてくれる。『ル ソルシエ』で過ごす時間は、その魔法を解き明かしながらも心から楽しむ贅沢なひとときでございます。ご馳走様でした。

ル ソルシエ
山口県周南市
https://tabelog.com/yamaguchi/A3505/A350501/35009481/

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