豊かな大自然に囲まれた街、山形県西川町。東北の名峰の月山の麓にあり、町の面積のほとんどを森林が占める。また、日本一の清流と称された寒河江川が流れ、積雪量においても日本トップクラスを誇ります。それだけ豊かな自然の表情を持つ町にあって、行者宿として歴史をスタートしたのが『出羽屋』。

昭和初期に創業した宿は、豊かな山の恵みを食べられると有名になったが、4代目の佐藤治樹氏がこれをさらに深化させ、唯一無二の山菜料理を完成させております。

旅館そのものは歴史を感じる風情だが、奥へ奥へと進んでいけば、大きな窓から中庭を望む素敵なモダンなカウンター。2023年にリニューアルしたばかりだそうで、ここが4代目の舞台になっております。古さの中にモダンを。まさに、出羽屋の料理のコンセプトをそのまま表現したような空間になっております。
前半に登場する山菜の盛り合わせは、もはや図鑑。以下、12種類。
「アマドコロ、カタクリの花、シオデ、ぜんまい」
「蕨、あいこ、山うど、なんまい」
「青ミズ、若ごぼう、どほいな、ヤマニンジン」
整列された山菜たちは、もちろん地元のテロワールばかり。中には崖でしか採れない山菜もあるのだとか。それぞれの個性にぴったりな調理法を実践して、新しい食体験の世界へと誘います。

さらには、「仙人の霞」と呼ばれる幻の食材まで登場。木生海苔といって、標高1000m以上の山のブナの木に着生する苔の仲間なんだとか。その名にふさわしい海藻のような雰囲気の持ち主になっております。

また、山菜は前菜としてだけではなく、炭火で焼いたり、

天麩羅にしたりと主役としても活躍。

さらには、調味料としても役割を果たすなど、あらゆる角度で山菜を楽しませてくれました。
山菜は間違いなく主役の1つだが、美しい清流だって食材の宝庫。お造りにていただいた「桜鱒と山女魚」をいただいたのが、特に前者の脂のノリには驚いた。1日1本ほどしか収穫がないそうで、当然のように市場に流通してないそうです。確かにこのレベルの桜鱒は記憶にございません。

山や川がこれだけの食材の宝庫なら、動物達が集まってくるのも必然。特に山形の熊には脂がのりやすいという個性があるらしく、実際に熊鍋でいただいた油の甘さに驚かされます。

赤身は「熊かつ」にしていただきましたが、チャーシューのように味がしっかりとのっておりました。

山形の伝統に触れられるのも嬉しいポイント。例えば、山形の伝統的な保存食である「凍み餅」。まるでおかきのような食感で、みたらし醤油で食べるおやつ的なもの。豪華に鰻を挟んでいるが、主役はあくまでも凍み餅に。美味しいが目的ではないはずの保存食をこれだけ美味しく仕上げるとは、、、

最後の食事からも山形の伝統を垣間見ることができる。白いご飯が贅沢だったそうで、そのかさ増しのために食材があったんだとか。その文化の延長でありますが、かさ増す役割を果たすのが筍というのは実に贅沢ですね。笑

唯一無二の山菜料理、堪能させていただきました。ご馳走様です。
その他のお料理。
「スナップえんどう」当然のように朝採れのものが提供されます。笑

「庄内鴨」地元の鴨も魅力的だが、手づから収穫するという行者にんにくが美味すぎる。

「葛饅頭と潤菜」摘みたての潤菜!

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出羽屋
0237-74-2323
山形県西村山郡西川町間沢58
https://tabelog.com/yamagata/A0605/A060505/6000120/