2024.04.21 夜 鰻を追求する男。@参宮橋 あさや 鰻 京王・小田急沿線 10000円〜29999円 ★★★★☆ 関東風か関西風か、鰻の語るのにしばしば議題に上がるキーワードだ。だが、参宮橋にできた新店『あさや』の議論はここに止まらない。 関東風か関西風かに止まらず、鰻の可能性をどこまでも追求する料理店なのです。採用しているのは鰻を使ったおまかせのコース。金額も22,000円と安くはないが、逆に言えば、鰻だけでこの価値を生み出すのは並大抵の話ではない。それでも、予約が全く取れないほどの人気を誇るのは、その価値を完全に認められた証でございます。大将は、鰻屋に生まれ、和食や中華を経験して独立。その経験もまた新しいコースの設計の一助になっているようです。もちろん鰻は、素材から強いこだわりを見せる。 まず、浜名湖で育てた「イソフラボン鰻」。大豆イソフラボンを混ぜた餌で育てたものだそうだが、女性ホルモンと似た作用があり、鰻がメス化していくのだとか。他にも、名店でお馴染み大井川の「共水鰻」、岡山産の「天然鰻」、柔らかさに定評のある宮崎の味鰻の「新仔」が登場。関東と関西どころか、養殖と天然、大人と子供、あらゆる比較が体験がコースの中に組み込まれているのです。 そろそろ、コースをご紹介してまいりましょう。ご覧の通り、全てのメニューを”鰻”がつけたくなるアウトプットです。「鰻の白焼きと筍」 「鰻の春巻き」鰻、桜海老、玉蜀黍、筍の春巻き。中華での修行経験がいかせる軽いタッチの春巻き。 「鰻の刺身」捌きたてだからか、いかってる雰囲気。強い食感がソースや野菜の味わいを増幅させる装置に。 「鰻の肝焼き」タレがたっぷりでこのままでも美味。むしろ、強烈な味わいを山菜などのソースが抑え込むような印象。 「鰻巻き」鰻は生蒸しされて柔らかく。生蒸しの場合は、骨抜きが大変と聞いたことがあるが、きっと丁寧に処理しているのでしょう。春を感じる花山椒を添えて。 「鰻の印籠焼き」印籠のような輪切りでの火入れ。皮が全体にあるのでパリパリ加減が目立ち、中の脂もしっかりと感じられます。 「鰻ざく」ひれ焼の鰻ざく仕上げ。やはりこのままでもタレと香ばしさが十分だが、酸を使って綺麗にバランスを取ります。 「鰻の白焼き」手前は、岡山の天然鰻を地焼きで。奥は、新仔を関東風の蒸し仕上げで。後者の脂が悶絶級に美味。肝の塩もアイデアフル。 「鰻重」手前は、地焼き。奥は、関東風の仕上げ。今度は地焼きのレベルの高さにびっくり。焦がすほどパリパリに焼く訳ではなく、皮だけがパリッと香ばしく、身の部分は柔らかさと脂の保存率が高い。これは焼き手の技術力の高さが伝わる代物だ。 鰻の可能性を広げる、圧巻の鰻コースでございました。個人的には鰻自体を直球で食べさせるものがお気に入りだったが、このアプローチの先に鰻料理の発明がありそうだ。今後も定点で食べさせていただきたい鰻でございました。ご馳走様です。 — 参宮橋 あさや東京都渋谷区代々木4-6-5 A&U 1Fhttps://tabelog.com/tokyo/A1318/A131810/13289291/