「当店の場所は確認してますか?」
これは京都の日本料理店『縄屋』への電話予約の際に問われた質問。至極当たり前のことだが、場所をざっくり”京都”とだけ確認をした人は痛い目にあうことでしょう。場所は日本海側の京丹後にあり、京都駅から車で2時間半の道のりなのだ。実際に京都駅からタクシーに乗ってから気づいたなんてお客さんもいるそう。お店にも自分にも迷惑をお掛けしないよう、しっかりと場所を確認することをオススメします。
さて、それではお店のレビューを始めていきましょう。
数々の料理人を輩出し続ける京都の名店「和久傳」のご出身。確かな技術を身につけ、自然の溢れる地元京丹後で縄屋をオープンさせたのは2006年のこと。素材リスペクト型の料理人で、薪での調理を採用するなど、原始的なアプローチは好感度が高い。スペインの「エチェバリ」然り、世界ではプリミティブな料理が注目を集めるが、同じ方向を向いているといっていいでしょう。このシーズンは山菜が楽しめますが、これは自らが摘んだもの。大将のGoogleマップには、どこでどんな山菜がとれるかマッピングしてあるそうです。笑
プリミティブなアプローチにあって、その意味を理解して効果的にコースを設計している。例えば、最初に提供される料理はシンプルな煮えばなの白米。お凌ぎと考えれば一品目に採用されることに不思議はない。だが、これは薪料理の特徴からの選択のようです。薪料理は最初に強い火が出るそうで、この熱はご飯を炊くのに相性がいいのだとか。薪焼きとはこれが落ち着いた後の熾火で調理することをさすが、これを作る過程をしっかり利用しているのです。
縄屋のタグラインに採用されるのは魚菜料理の文字。その名の通り、地元の魚と山菜でコースが設計されております。過度な味付けは一切なく、素材の持つ五味や薪焼きによる香りづけなどが味わいを決定づけます。
一方で、出汁のひき方のレベルの高さなどの技術の高さも見てとれます。繰り返しになりますが。いま世界ではプリミティブなアプローチが1つの流行の兆し。だが、わざわざ世界に行かずとも、京都で堪能できることをお約束致します。京都駅からはかなり遠いけど。笑
料理のラインナップはこちら。
「赤座海老」さっそく薪焼きの魅力全開。ふんわりと面で火入れをしたような海老の甘味が絶品。
「鯛の松皮造り」煎り酒と
「甘鯛のお椀」この香のいいアミカサダケも大将自ら採ったもの。名店での修行の結果か、出汁のレベル感にも脱帽。
「虎河豚のお造り」浅葱と自家製の柚子胡椒と。結果、淡白さとは無縁。身皮や遠江など、素材が持つ様々なコントラストを楽しませる。
「蛤」コシアブラやノビルとともに
「ノドグロの焼き浸し」独活やうるいとともに。
「太刀魚」酸味を効果的に利用するなど、脂たっぷりの食材がいつの間にかサラダに。秀逸。
「虎河豚の唐揚げ」こごみや山椒の葉とともに
「食事」鮪とたたいた蕨とともに
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魚菜料理 縄屋
0772-65-2127
京都府京丹後市弥栄町黒部2517
https://tabelog.com/kyoto/A2609/A260903/26015836/