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2019.12.11 夜

食べているのは、文化であり、歴史であり、哲学だ。@Noma コペンハーゲン

海外(デンマーク)

海外

★★★★★

衝撃。世界で最も影響力のあるレストランの1つ『Noma(ノーマ)』での食体験、その感想はこの一言。誤解を恐れずにいえば、ものすごく疲れた。だって、右脳も左脳も、体も心も動き続けたから。単純な食事ではなく、そこには北欧がもつ文化や歴史、そして哲学が存在しているのだ。言葉にするとどうしてもチープになってしまうのが怖くてキーボードが止まっていたが、この熱を少しでも温度があるうちに書き残しておきたい。

Game And forest.
ノーマの料理は3つのシーズンに分けられる。魚介のシーズン、野菜のシーズン、そした今回のゲーム&フォレストのシーズン。いわゆるジビエを中心として、森の中に遊びにいくように、木の子や果物などを駆使した料理達が続きます。ちなみに、ノーマには3つのキッチンがあります。我々の食べる料理の仕込み用と仕上げ用、そして、もう1つが実験用のキッチン。我々に「衝撃」をもたらす次のシーズンの料理の開発は既が常に行われているようです。そんな渾身のコース、さっそくいただいていきましょう。きっと、食べているのがただの食べ物ではなく、文化であり、歴史であり、哲学であることが伝わるはずだ。

「apple salada」
ノーマが世界に与えた衝撃といえば昆虫食、ことさら蟻の存在です。そこには賛否両論がありますが、そのアンチテーゼをつくように林檎のサラダにはクワガタが寄りつきます。本物ではなくあくまで模したものですが、あえて虫に寄せていく姿に驚きます。笑 それにしても美しいアップルサラダ、全てを球体にしていく作業にも頭が下がります。そりゃ、昆虫達も寄ってくるというもの。笑

「reindeer chestnut」
この一皿で完全に森の中に迷い込みます、大袈裟ではなく本当に。森を走り回る動物達、そこに自生する植物達との会合です。鹿の胸腺をフライにしてみたり、舌をビネガーで味付けしてみたり、ボーンマロウをいただいたり。さらに、セップ茸や松の実、ホワイトカラントというベリーの一種も。食べ方が指南されるのだが、1つのポーションをいただくたびに下に隠れるスープを飲んで欲しいとのこと。森の香りとしか表現のしようのない香りが広がり、それぞれと森との関係値を際立たせていきます。

「blackened chestnut」
60度の火入れを1ヶ月も続けた!?ラビットのゼラチン。

「new season hazelnuts」
なんなんだ、この美しいテクスチャーは。スライスしたヘーゼルナッツに、くるみのピュレ、さらにキャビアを合わせます。ヘーゼルナッツのさくっとした食感が心地よく、ここまで素材の存在感を明確に意識できたのは初めてかも。ヘーゼルナッツはオイルにもなって存在感を強調してます。キャビアとの相性も抜群で、個人的にはかなりお気に入りの一品となりました。

「chestnut dumplings」
栗餃子。これにダックの脂であげたバーチリーフを重ねる。植物と動物が融合した1つの塊が、ゆっくりと体内に溶け込んでいくかのよう。森だ。

「pumpkin cooked with plum and hipberries」
熟成させた鹿の出汁のソースとともに。

「a light stew of deer brain with oregano」
トナカイの脳味噌のサラダ。刺激的なネーミングだが、その姿は美しいもの。わさびの葉っぱで包んでタコス風に。オレガノなども効いており、酸味の濃淡を楽しめるもの。

「dried autumn fruits with rabbit sauce and toffee」

「nixtamalized potatoes and boar speck」
北欧の歴史や文化に想いは馳せる、その切実さを感じる一品。クリスピーにあげたジャガイモ、その上には猪の脂を塩漬けにして凍らせたものを薄切りにしたもの。きっと寒い冬に凍ってしまった猪をナイフで削いだ時、狙ったわけではなく口溶けの良い薄いスライスになったのでしょう。これが溶けていくようにソースの役割を果たすのだから面白い。スパイスを加えて味覚を刺激しているが、きっと当時ならこれは生きるためのもの。寒い冬に体を芯から温めるスパイスの存在は生命線ですらあったのでしょう。こういうアプローチでの歴史や文化とガストロノミーの融合は、極めて本質的。少し泣きそうです。

「duck feast」
これがメイン料理の鴨。ご馳走と名付けるのにふさわしい一品であり、現代の食文化への皮肉というか警鐘まで含まれる。まずは衝撃のビジュアルが挨拶代わりで、クチバシや体が鴨そのもので登場します。これをみてもしかしたら動物愛護団体が「可哀想」といういうかもしれないが、むしろそれは本末転倒。いかに大切な命をいただいているのか、これを理解するのにこれ以上ふさわしいものではない、そう思います。

その意識を証明するのかのように、脳味噌、心臓、骨、もも肉、胸肉と全ての部位を網羅していきます。1つのコースでこれだけの鴨料理を並べることこそ、命の尊さを伝えるものと言っていいでしょう。これこそが人類の根源であり、nomaの哲学だ。

「pickled partridge egg」

「ragout of seasonal mushrooms」
白トリュフなどたくさんのキノコを混ぜて、さらにポルチーニのオイルでソテー。フレンチは料理を常温で食べるのが常だが、ノーマはこれと全く違うアプローチをとる。温かいものを温かく、むしろスパイスを駆使して体を積極的に温めます。それは寒い国なのから当然のアプローチ。フレンチの輸入品でなく、新しい北欧料理を名乗るのにふさわしい。

「poppy seed paste and cardamom mousse」
カルダモンとヨーグルトのムース。ここにも温かいソースが使われる。

《店舗情報》
Noma
Refshalevej 96, 1432 København, デンマーク
+45 32 96 32 97

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