鮨屋の系譜は非常に興味深い。江戸前の鮨の哲学や技術は確実に次の世代へと引き継がれ、職人それぞれがさらなる成長を目指している。修行先によって職人の特徴が見えてくるのが面白い。つまみと握りを交互に提供する「すし匠」系、強い赤酢が特徴の「次郎」系などといった感じだ。
本日訪ねた銀座の『かねさか』。ご主人金坂氏の系譜をご紹介したい。言わずと知れた銀座「久兵衛」で10年修業し、28歳という若さで独立。「かねさか」出身には、ミシュラン3つ星の「さいとう」をはじめ、「すし家」「いわ」など鮨業界をリードする店の名前が並ぶ。数々の店を訪ねているが、実は久兵衛出身の系譜の鮨店には意外にも縁がない。そういう意味でも今回は楽しみな訪問となりました。
世界的人気を誇るこの一派。ミシュラン獲得店も多く、その影響もあってか店には外国の方々の姿が目立つ。細長いコの字のカウンターで両端のつけ台に、金坂氏と弟子が立つ。つまりここには名店へと成長する出世場所ということですね。「さいとう」さんも「いわ」さんも立っていたということか。今回握ってくれた未来の巨匠は三平氏。柔和な表情で敷居の高い店に居心地の良さを提供してくれます。
全体的な印象としてはさすがの安定感を感じました。伝統的な江戸前鮨を守る赤酢のシャリだが、シャリの温度管理には際立ったものを感じます。頻繁にシャリを変えて徹底した温度管理を実現しています。さらに、ネタによってシャリの温度をかえて提供するだけでなく、人肌に温度になるまでネタを置いてみたりと随所に温度へのこだわりを感じます。
例えば、マグロのシャリは温度の高さに少しびっくり。ネタも少し温度を持つまで寝かしています。一体感はもちろんだが、いままで味わったことのない不思議な体験となりました。
一方で小肌なんかでは温度が低めなんですよね。おかげで生臭さをきっちり排除してます。
シャリの食感は空気感があってふっくら。口の中で解けていくんですよね。これがねっとりした寝かしたネタとも相性がいい。寝かした金目鯛とは抜群の相性でした。
新しい試みも随所に。つまみと握りで1つずつご紹介。
手渡しでいただいた「カラスミ餅」。鮨屋で餅食べたのは初めてだと思うが、カラスミのような強い食材と存在感のある米である餅は相性が抜群にいい。「カワハギの肝和え」もお気に入り。カワハギの肝はずるいぐらい美味だが、ここに胡麻の風味がいいアクセントになってるんですよね。
今回が初めて(おそらく?)の「かねさか」系の鮨。総本山からのスタートとなりましたが、どんな特徴をもった一派なのか今後もウォッチしていきます!
以下、つまみ。
「白魚」
「白海老」
「松川鰈」
「あん肝」
「毛蟹」北海道
「カラスミ餅」
「鮑 蛸」
「鰆の幽庵焼き」
以下、握り。
「鯛の昆布締め」
「墨烏賊」
「鯵」
「車海老」
「赤貝」
「トリガイ」
「はまぐり」
「雲丹」
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銀座 鮨 かねさか 本店
03-5568-4411
東京都中央区銀座8-10-3 三鈴ビル B1F
https://tabelog.com/tokyo/A1301/A130103/13005003/