フレンチには料理の数だけソースが存在すると聞いたことがあります。こんな言葉があるほど、フランス料理にとってソースは欠かせないもの。よくフレンチは足し算、日本料理は引き算なんて言い方をしますが、まさにこの足し算にあたるものがソースということです。
それほど重要なソースで人々の感動を誘うレストランがある。元麻布の住宅街にあるフレンチレストランの名前は『エクアトゥール』。ここのソースがとにかくすごいのだ。つまり、最高のフレンチといっていい店だ。いや、もはやフレンチのソースという概念ではカテゴライズできない秀逸なソースが登場する。
例えば「フカヒレ」のソース。
主役のオマール海老に負けぬフカヒレのソース。いきなりフレンチという概念では理解しがたい展開が繰り広げられます。主役と主役のようであるが、絶妙にマッチするのだから面白い。器はフカヒレに呼応するかのように輝きを放ちます。
例えば「トリュフ」のソース。
ほんのり火入れされた金目鯛に筍とセリを合わせたものが登場。これに合わせるのが酸味のきいたヴィネグレットソースでトリュフの香りをうつしたソースが登場します。文字通りの足し算で金目鯛に香りと風味が追加されます。
例えば「水菜の榎茸」のソース
主役は河豚の白子の直火焼きで、自家製のからすみに野菜のソースが重ねられる。もはや日本料理と呼びたくなりますが、からすみは日本酒と白ワインで漬けるなど、フレンチのブリッジは用意されている。野菜の出汁にからすみの塩気、爽やかな柚子の皮のアクセントと面白い一品だ。
例えば「柑橘」のソース。
テーブルに置かれると同時に柑橘の香が鼻に届く。白ワインをベースに野生のみかんのオイルやライムの皮でソースを作っているそうだ。さらに、スパイスやココナッツを付加しているのかタイ料理のようなニュアンスを感じます。例えていうならグリーンカレーのイメージに近い。主役となるタラバガニと蛤よりもついついソースに注目してしまいます。笑
例えば「メンマ」のソース。
ソース作りには発酵の技術も用いられる。メンマとは筍を乳酸発酵したものだが、これと山くらげを合わせたソース。メインの食材にはA5ランクの和牛のサーロイン、赤穂の牡蠣、キャビアとまた主役級が重ねられます。
メインでももちろんソースが存在感を発揮する。
魚料理では、真魚鰹の直火焼きに「ウドとツブ貝」のソース、肉料理では、ラカンの鳩にその「内臓」のソースが合わされる。この鳩は絶品。自らの内臓で作ったソースが合わないはずがない。火入れも含めてこれは素晴らしい一品だ。
ちなみにエクアトゥールは7月から9月にかけて店の姿をイタリアンに変える。
期間限定の店は「カゲロウ」というが、そのイタリアンの要素もこの日感じさせてくれました。メインの前に提供された冷製のカッペリーニがそれだ。蛸のラグーに蝦夷鮑をそえた一品。カゲロウへの訪問も楽しみになりました。
お気づきだと思うがソースの話ばかりだが食材も全て主役級。これを超えるほどソースがユニーク。エクアトゥールとは原点という意味だそうですが、素材を原点にソースを付加することで料理が完成する。しかもこのソースはフレンチの手法を問わず、和や中華のエッセンスもとりいれる。是非どんなソースがでるかを楽しみに訪問してほしい。
その他、メモ
「金柑 フォアグラのムース」
金柑をくり抜いてフォアグラのムースをつめて表面上をキャラメリゼしたもの。爽やかな酸味が強い。
「キルシュのアイス」
黒トリュフとともに。
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エクアトゥール
東京都港区元麻布3-6-34 カーム元麻布 2F
https://tabelog.com/tokyo/A1307/A130702/13121866/